三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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「食人木か…流石に学校の敷地でそんなものがあるとは思いたくないが、否定できないよな…。ここになくたって、いつか出会うことがあるかもしれないし。故意に閉じ込めてきそうな輩は普通に思い当たるな、あの二人組ならそんな行動をしてきても不思議じゃない。それに災害だなんて予期しようがない。気にしてばかりでは身が持たないが、次の瞬間にも起こる可能性はどうやったって否定できない。なにを身につけてようと怪我する時はするし、死ぬ時は死ぬが、死地を切り抜ける努力はできる。治療魔法も、エピスキーぐらいは簡単に使えるようになっておいた方がいいだろう。あと、ハナハッカ・エキスもできれば持っておきたいかもしれない」
立ち入り禁止、危険というワードからどんどん想定は飛躍していくが、石橋を叩いて渡るぐらいが丁度いい。下手に舐めてかかって痛い目を見るよりかはずっとだ。事前準備だって、なにもそこでしか役に立たないわけではないのだし、習得すればするほどお得だ。特にエピスキーなんかは、日常生活のちょっとした怪我ならすぐに治すことの出来る便利な呪文だ。あまりに酷い怪我や病気は相応の魔法薬に頼らなければならないが、擦り傷だの切り傷だのを治すには持ってこいで、極端に扱いが難しいというわけでもない。まぁ、それでカバーできない場合はさらに上級の治癒魔法を使うか、外傷ならばハナハッカ・エキスが効果的になる。ただ、上級の治癒魔法は難しくて習得しきれるか不明なので、それよりはまだ手頃…言うほど手頃でもないのだが、姿現しでバラけた傷でも治療できるハナハッカ・エキスを持っておきたい。
「…なんだか、セシルはその冤罪で酷い目にあったような口振りだな。イギリス最大規模の学校組織とはいえ、ホグワーツにそんな悪意に満ちた人間はいないと思いたいが、どのみち冤罪だろうと立証できなければ信用はガタ落ちだからな……。悪戯程度ならば大目に見てもらえるだろうが、シャンデリアはそんな域を軽く飛び越してる……。いや、本当にマズイ。父様にまで話がいったら、殺されるかもしれないぞこれ……」
『してくる』という、まるで冤罪による被害を体験あるいは近くで見てきたかのようなセシルの語り口に、彼はそういう経験があるのだろうかと気になったものの、今まさに断頭台に立たされるかもしれない状況で追及する暇も余裕もなく、顔色を悪くすれば額にじんわりと冷や汗を滲ませて、バレないこと──父に連絡が行かないことを祈って。全くもってオレとセシルのせいではないのだが、こんな騒ぎを起こしたと知られれば、文字通りの断頭台送りだって否定できない。本当に殺されるかもしれない……。あの人は、身内に情なんてほぼないし、なによりも冷酷な人だし……つまるところ、とても怖いのだ。
「ああもう!そりゃあ来るよな!くそっ、走るのなんて得意じゃないんだぞ!」
後方から聞こえた声に、思ったよりも抜けてる先生方が来たのでは?と拍子抜けしつつも、セシルの手を取ったまま全速力で駆けて。悲しいことに、運動神経には自信が無いため劇的な速さで駆け抜けるような芸当はできないが、それでもなんとかバレずに済む程度まで持っていけるだろう。とにかく、角に曲がろう角に。駆けつけてきた人達がシャンデリアの音ではなくニフラーの声に反応してきた、という疑問はオレの中にはまだ芽生えずに、一先ず地図に従って、図書館近くの角まで辿り着いたところで、ニフラーがやけに怯えた様子でしがみついて来たことに気がついて足を止めて。シャンデリアの地点からは多少距離が取れているはずだから、追っ手はそちらに気を取られてここまでは来ないだろうという判断だ。
「ゲホッ…。焦ってたから強く手を引っ張りすぎたかもしれない。セシル、大丈夫か…?」
禁じられた森に入るまでに、鍛えておくべき箇所がまた一つ見つかった。オレは思ったよりも体力がなさすぎると、軽い息切れで咳を一つしながらセシルに問いかけて。手を繋いで引いたのはいいものの、力加減にまで気が回らず、痛い思いをさせていたら申し訳ない。
「ニフラーと、パフスケインもか?その子が怯えるなんて、一体どうしたんだ…?」
怖がりなニフラーはともかく、人懐こいパフスケインまで怯えている様子は、只事ではないのかもしれない。追っ手の発言から、そして学校という場所からしてセシルの言う通り教師が来たのだとは思うが、それならそれでこの子達が怖がる理由がわからずに、困惑しながらニフラーの顎を指で撫でて。
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