三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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「そうそう、元闇祓いが書いた自伝とかもあるが、読んでてもとにかくカッコイイんだ。へぇ…政府関連か、堅実でいいんじゃないか?まぁまだ学校に入ったばかりなんだ、やりたいことは見つかっていないのが普通だろう。そのうち、セシルがやりたいことを見つけたらその時は応援する」
闇祓いに興味があると父様に知られればまた怒られるから、そういう本はこっそりと一人で楽しんでいる。兄様が闇祓いを目指し始めた時にオレも釣られて興味を持ったのがきっかけだが、単純に自伝を読むのは面白かった。特に、デスイーターと対峙した章は手に汗握るものがある。闇の帝王に共感し、その信奉者となった者がデスイーターで、今は既に死んでいるかアズカバンに収監されているのがほとんどだ。生きて逃亡していたり溶け込んでいたりする者もいるというので、それが可能な金持ち──オレの父様もその生き残りのデスイーターなのだと囁かれているが全くの事実無根である。デスイーター疑惑の噂を流されるのはセントリックに限らず大なり小なり貴族にはあるあるなのだが、特にオレの家は顕著だ。腹立たしいことである。なんにせよ、そんな噂を打ち消すには当人が頑張るしかない、だからオレだってできるだけ好成績をとり、素行良くしようと心掛けているんだ。まぁ、そんな建前がなくとも将来魔法省で勤めるにはそう振る舞わなければいけないのだが。セシルはどうやら政府関連に興味を持っているようで、オレの感想は”子供にしては堅実だな”というものだった。こういう年頃の子供は大体がクィディッチ選手と答えたりするので、オレの目にはセシルはかなり大人びて映る。だが安定とキャリアを取るのは大切なことなので、11歳ながらに見える思慮深さはかなりの好印象だ。まぁ、人間は変化する生き物だ、そのうちやりたいことだって出てくるだろう。その時は応援する。
「昔に比べると多少はマシになったとはいえ、相変わらずデマ記事が並べ立てられてて酷いからな。結構被害者はいるのに懲りないのは感心するよ、悪い意味でな」
あの新聞社にはなにを言っても無駄だし、記者によっては言ったことを全て悪意的に捻じ曲げて掲載してくるので手を出さない方がいいと学んだ。それでも批判は浴びているようだが、俗な記事を楽しむ人間が多いから改善されないのだろう。
「絶滅危惧種でもおかしくないよな、でも禁じられた森にいたりいなかったりするって話だぞ。実際にいたとしても俊敏だから、動体視力が良くないと見るのは難しいらしいが。でも一回でいいからお目にかかりたい」
冒険記問わずあらゆる本に登場するユニコーン、大抵の物語では伝説の神秘的な存在として描かれているが、実物はもっと美しいのだろう。畏れ多いので触りたいとまでは言わないが、一瞬でもその姿を見ることができたらきっと良い思い出になる。やっぱり、計画を立てて忍び込まないと。一年生の間に一回は行けるか…?
「お、おおお落ち着けニフラー!大丈夫、大丈夫……って、セシルストップ!顔と声が少し怖いぞ!」
(セシルはせっかく綺麗な顔をしているのに、台無しになりかけてるぞ?!ニフラーも少しバタつき始めているし、やばいやばい!今更髪型なんて気にしていられないが抜けるのは困る!!この歳で十円ハゲは勘弁だ!!)
オレが動き始めたらまた鳴き始めたニフラーを慌ててあやそうとし、セシルを見ればなんとも形容しがたい笑顔を作っていた。いや怖い!オレから見ても少し怖い!普通に笑えば綺麗なのに、なんでそんな人相が悪くなってるんだ!?
「よ、よし!わかったわかったから!一旦降りようなニフラー…!セシル、オレと話している時みたいに普通にしていてくれ!そうしたらニフラーも懐いてくれる、はず……多分……」
埒が明かないので、オレもセシルからボタンを貰っていたことを思い出してローブのポケットからそれを取り出せば、手のひらに乗せてニフラーにちらつかせて。とりあえず頭から降りて、腕で抱けるようになってくれればいい。セシルもさっきまでオレと話していたみたいに平常に戻ってくれれば、きっとニフラーは怖がらないはずだ…多分。
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