三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
通報 |
「いや、オレは魔法省に入らないといけないんだ。父様だって魔法省所属だし、兄様もそうだ。他の親族だってほとんど魔法省職員だ。そこでマグルとの交流を要とする部門につけば問題ないが、それも上級役職以外だと魔法事故惨事部ぐらいだろう。まぁあそこの仕事も、魔法事故に巻き込まれたマグルにオブリビエイトするのがメインだから関わりが薄いが。あとは……マグルに直接関わるのではなく、捜査の一環で溶け込むこともある闇祓いとかか?闇祓いになる気はないが」
イギリス魔法省において勢力を拡大するということは即ち一族の立場をより強固なものにできるということだ。そのため、貴族は魔法省に対してなんらかの方法で食い込むことが多い。そう聞くと腐敗やらのイメージがつきものだが、むしろなんの後ろ盾もなければ善悪問わずすぐに餌食になる。身を守るためには必要なことで、似たようなものに一族経営の企業なんてのもあるのだから、それに対して非難は浴びる謂れはないと思っている。話を戻すが、セントリック家は、最もメジャーな方法──分家含む血縁者の所属数で様々な部に影響力を与えている。明言こそされていないが、魔法省に入って、それなりに優秀な功績を残さなければ当主の座だって継げないだろう。だから、オレは必ず魔法省に入らなければならない。しかし決して闇祓いになってはいけない。何故かは知らないが、父様は闇祓いに所属することを良く思ってはいないからだ。兄様に対してもすごく怒って、勘当を言い渡しかけてたほどだから。なんにせよ、なりたい職業なんて夢を抱いたことはほぼないので特に将来が決められていることについて不満はないのでいいのだが。
「まぁ、噂なんて尾びれがつくものだからな。単なる生徒同士のお遊びから死者が出たと勝手に捏造されるなんてこともあるだろう。七不思議、とかそういうデタラメだと思う。だが君の言う通り、違法魔法生物を飼うっていうのは案外有り得るだろうな。飼育そのものが目的ではなく、貴重な魔法薬の材料として密輸入する闇の魔法使いも後を立たないらしい」
加害者の生徒がとんでもない大物だったならまだしも、死者が出たら流石に公開しないわけにはいかないだろう。十中八九、東洋の学校の……なんといったか、そうそう七不思議。ああいった系統のタチの悪いホラー話だろうな。だが違法魔法生物が有り得ると思えるのは、そういった事件が実際に何度も起こっているからだろうか。違法魔法生物は、人が飼い慣らせない危険な動物が多いのでその被害を未然に防ぐために輸出入や飼育を禁じられているという面が目立つが、それ以外にも魔法薬の貴重な材料として乱獲されて数を減らしたために一切の手出しが許されていない動物もいる。だがそんな動物は金になるし、それ相応に強力な効果がある魔法薬ばかりだから密猟がよくあるのだと、いつかのパーティで親戚が言っていた。詳しいことは身内と言えど機密情報なので教えてもらえはしないが、まぁ…ここの敷地は広いし、持ち込んでいる者もいるのかもしれない。
「まぁ、人生なにがあるかわからないからな。別に故意的でなくても誰かの魔法薬事故に巻き込まれるなんてこともあるかもしれない」
うんうんとセシルの言葉に頷いて。
「ニフ…!?いでで!!こら!髪の毛を引っ張るな!!」
モサモサとした毛と暖かな体温にそれが動物だということはわかるが、薄目を開けても視界は真っ暗なままで正体が判別できないままのところに響いた甲高い鳴き声と、次いでセシルのどこか高揚するような言葉にオレもテンションが上がり引き剥がそうとしたが、どうやら髪の毛をガッチリとホールドされているらしく痛みが走った。これじゃ見えない、オレもニフラーをちゃんと見たいのに!
「いたたた!そうだ、セシル!ボタン!!あの綺麗なボタンをニフラーに!!逃げないように持っておくから、ニフラーにボタンを近付けてやってくれ!」
思ったより力が強いのでどうしようかと迷ったがすぐにセシルの持つキラキラなボタンを思い出し。ボタンの取り逃げを防ぐために胴体をしっかりと持てば、ニフラーの興味を引いてくれとセシルに頼んで。
トピック検索 |