三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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僕のデリカシーのない質問に、エリオットくんは狼狽の色を隠せなかった。まるで僕のいった事はそうであるということを、僕に知らせない為に、途切れ途切れに喋っていて、明らかに仕草が嘘をついているということを物語っている。エリオットくんは慌てて僕の謝罪を止めてそう言ったら、僕は
「そ....そっか...デリカシーなくてごめんよ...僕には妹が居てさ、もし僕がいつか成功を納めたとしたら、彼女にとっては大きなストレスになると嫌だなぁと考えてたら、気づいたらそう聞いちゃったよ。でもまぁ...そうだねぇー...エリオットくんなら絶対お兄さん越えられるよ。頑張ることはとてもいい事だと思うよ、でも頑張りすぎたりする事は体に良くないからねぇ。....無理しないでね?」
実力がなければ淘汰される社会は残忍だが、無人島やらに行かない限り、誰もかもがこの社会の中で生きていかなければならない。エリオットくんのことはよく分からないが、ただ将来は有望である事は感じるし、今の所成功する確率が大きいと思う。エリオットくんが社会に呑まれて息が出来なくなることはありえない訳でも無い。どんなに知識が豊富で、優秀な人間であっても、健康なメンタルがなければやっていけないし、特に競争社会である貴族階級なら尚更だと思う。無理しないでというのは、彼がたとえ無理してても止められないし、そもそもその権利が無い僕が言っていいことでは無いことは分かる、あまりにも無責任だ。だが、それ以外の言葉は思いつかなかった。
(まぁ、戯れ言だと捕らえてくれればいいんだ。そもそも他人の僕が口挟んでいい問題じゃ無いし、本人も聞き飽きてる頃何じゃないかな。)
「..............」
(さっきの、ベッドに急いではいる音、もしかしてバレたか...?だとしたら先生ならともかく、犯人なら直接こっちのベッドに掛ける確率も結構高い。命は惜しいから、せめて怒られてもいいから、頼む...先生であってくれ...)
コツン....コツ...コツ...
「....!!!」
また歩き出す足音、そして音が段々と遠のいて行くのを感じたら、僕は念の為、本当に行ったという確認をする為、もう少しの間だけ聞き耳を立てて待機をしたら
「うん....行った....かもしれない」
こくりと頷けば、そっと僕に覆いかぶされているエリオットくんに目をやると、彼は控えめに僕のシャツを握っていて、その透き通るように美しいライラックの瞳には不安に揺れていた。僕は彼を怖がらせてしまったのかもしれないと思い、慌てて離れるように退けて
「ご、ごめんよ!!!いきなり押し倒して驚かせちゃった!?!?」
僕は申し訳なさそうにペコペコと何度も頭を下げて謝って
(でも...良かった...エリオットくんがちゃんと不安を表情にできて。)
その表情を見れた事に、少しだけ安心した。少なくとも、まだ負の感情を表情にして伝えれると言うことは、まだ手遅れじゃないという事だから。
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