ホグワーツにて、貴方と共に。(〆）

「だが、あの2人以外の有力候補がいないのも事実だな。他に目を付けられているならともかく、それはそれで突き止める手段が限られてくる。オレやセシルが顔も名前も知らない人物なら、随分陰湿な手口を取ることからしてそうそう尻尾を掴ませてはくれないだろうし」
マシューの方はブライアンよりは賢そうだったが、それでもあんな不利な状況で冤罪をかけようとした男だ。知能的に考え難いというのも勿論だが、彼らの傾向的にやりたいことは人目のある所での公開処刑だろう、手紙という目立ちにくい行為とは正反対だ。ならば顔も名前も知らない誰かさんの線にシフトするのが普通だが、そうなってくると向こうがボロを出さない限り突き止める手立てがない。
「魔法生物でこんな見た目のものは見たことがない……と、思う。翼を持つ生物に絞ったって、オーグリーもオカミーも、ヒッポグリフだってこんな禍々しい姿はしていない。意図的に創り出した偶像に思えるが、率直に言って気持ちが悪い」
精々図鑑で見た程度の知識ではあるが、こんな特徴的な見た目をしたものならば覚えているはずだ。オレが知らない魔法生物という可能性だって十分有り得るが、どのみちあまり良いものではないだろう。見ているだけで精神不安を引き起こされそうだ、夜だから尚更に。
「こんなものを見た後に寝たら、確実に悪夢を見るだろうな。それに目も冴えてしまった」
寝直す、という提案に渋るように首を傾げる。就寝時間が早かっただけに、ある程度睡眠も取れたことが目の冴えに拍車をかけていて、到底再び眠りにつけそうにはなかった。
「セシルはどうだ？眠れそうか？図書館どころか、この時間帯に校内を出歩いているところを見られたら確実に罰則だろうが、部屋に篭っているのも退屈だな」
見張りに見つかるのに加えて、まだまだ間取りも把握していない点が多い。兄様からこっそり譲ってもらったホグワーツの地図があるとはいえそれも網羅しきっているわけではないし。セシルが寝直すならそれもそれで結構だが、眠気はすっかりとオレの元から逃げていってしまった。校内を出歩いているところを見つけられれば確実に罰則、だが4時まで警戒している見張りもそうそうはいないだろう。どうしようか、と首を捻って。