三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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「冬はマットレスぐらい敷いた方がいいと思うぞ、まぁ個室とはいえ付属寮だから温暖魔法なんかを全体に掛けてはくれそうだが」
オレは生まれてこの方暖かい寝具でしか就寝したことがないので、セシルの睡眠スタイルは見ているだけでも寒くなる。だが、セシルとて冬は毎年迎えていて、その度に対策はしていたのだろうからオレが心配するのも大きなお世話かもしれない。それに多分、寮だから寒くなりすぎることもないだろう、暖炉は個室にないから、学園が冷暖はある程度調整してくれるのかもしれない。でないと、夏は湖に面しているので涼しいが、冬は逆にとても辛い思いをすることになってしまう。
「ああ、また明日な。おやすみ、いい夢を」
セシルの合図を確認すれば、軽く杖を振って電気を消して。髪を乾かした時のような温風魔法だったり、こうした簡単な動作をカバーするような魔法は訓練して無言呪文で使えるようにした。だが授業で習うような呪文は、予習してきたとはいえ無言で行使するにはまだまだ力が足りない。
(兄様は、オレの歳の時はもっと素早く、そして正確に呪文を扱えていた。純血だ、純血だとオレは持て囃されているが、血統は才覚に影響を及ぼすことはない。だが、”エリオットは優秀だ”と父様は信じているから、その期待に見合うような存在にならなければ。次に家に帰れるのはクリスマス、か……。その時までに目に見える成長ができていなければ、なにを言われるかわからないな。ああクソ、まね妖怪のボガートがオレの前に現れたらきっと父様の姿に化けるんだろう、闇の魔術に対する防衛術の授業では、ボガートも扱われるって兄様が言ってたな……。はぁ、憂鬱だ。──でも、悪いことばかりじゃない、いい友達だってできたんだ。願わくば、セシルがオレの家の噂を聞いても信じませんように)
布団に入れば嫌なことを考えてしまうのは、いつから癖づいたものだったろうか。ごく稀に思考がループしてどうしても眠れない時は、父様の安らぎの水薬を数滴拝借して飲んだこともあったが、今日は眠れそうだった。それに、今までは抱いたことのない、明日が楽しみだという感情が沸き起こっている。それは間違いなくセシルのおかげだろう。だから、嫌われないようにというささやかな祈りを最後に捧げ、目を閉じればすぐに意識は沈んでいき。
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