三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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「よくアレと仲良くなりたいと思えるな、君も随分と度胸があるよ。なにもしていないのに嫌われてる時点で、望み薄だぞ?止めはしないが…」
オレだったらアレと仲良くなるなんて絶対にゴメンだ。だがどうやらセシルは違うらしい、一番度胸があるのは、こんなに目を輝かせて友達になりたいと言ってのけるセシルなんじゃないだろうか。マシューの動機は謎だが、接点がない以上それなりにぶっ飛んだ動機だろう。ブライアンのように女性関係の嫉み……というには、セシルは女生徒に囲まれていたりしたわけではないので時期尚早だろうし。ともかく、こちらに悪意を持って嫌がらせしてくるような奴とはオレはなるべく関わり合いになりたくはない。といっても向こうから関わってくるのだろうが。
「ん、少しな。すぐに部屋に戻るつもりだったから薄着だし羽織るものも持ってきていないんだ」
本来ならば一日の疲れを落とすはずの浴室でトラブルに見舞われるだなんて流石に想定していなかったため、着替え以外は杖ですら置いてきてしまった。今度からはこういう事態にも備えてなにかを持っていこう、時期的に後は冷え込んでいくばかりだろうし。
「いや、それだと君が寒いだろう?……だが、ありがとう。借りはまた返すよ」
ずいっと押し付けられたのは、今さっきまでセシルが着ていたカーディガンだった。それをオレに渡したらセシルが寒くなる、と突き返そうとしたもののきっと問答の時間で部屋に戻った方がずっと暖かい。袖は通さず肩に羽織るようにかければ、セシルが着ていた分、僅かに温もりを感じた。セシルに引かれていない片手でカーディガンが落ちないように押さえつつ、彼に導かれるまま歩けば礼を言って。
「カーディガン、暖かかったよ。助かった。君の準備が終わったらぼちぼち眠るとするか、初日から遅刻はしたくないしな」
再度絡まれたりすることもなく無事に部屋へと着けば、カーディガンをセシルへ返す。そしてオレのベッド側へと歩み寄れば、杖を手に取って振ると先端から熱風を出し、水気の残る髪を乾かして。子供は夜こそ遊び盛りで、オレも夜行性の部類に入るので普段ならこの時間帯はまだ起きているのだが、自覚していないところで緊張なりなんなりがあったのだろう、緩やかな眠気が意識を蝕み始めていた。とはいえセシルの準備をゆったりと待つ余裕はある、オレは自分のベッドに腰掛けると再度明日使う教材の入れ忘れがないかを確認して。
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