ホグワーツにて、貴方と共に。(〆）

｢急に現れては謂れのない因縁をつけてくる君の名前なんかどうでもいい。ブラックリストとして覚えておけと言うのなら別だがな｣
(デブがオレを目の敵にする原因はおそらく女子の気を引いているのが気に入らないことだろうが、このソバカスはなんなんだ？正直言って、セシルを敬遠するならばいざ知らず絡もうという気概は理解ができない。知り合いでもないのならば尚更だ)
マシュー・グレイソンと名乗ったソバカスは、セシルも否定して見せた通り確かに既知の仲ではない様子だった。貧民を徹底的に見下さないと気が済まない貧乏人アレルギーを患っているにしては、グレイソンというファミリーネームを持つ有力な家名を耳にした覚えがない。となれば単純にセシルが気に入らないということだろうが、とんでもない騒動を起こしたセシルによく食ってかかろうと思えたなと、オレにはない度胸にある種の尊敬すら抱きかける。オレがセシルを知ったのがあの儀式の時点だったならば、間違いなく関わらないようにするはずだから。大多数もおそらくそうだろう、今集まっている生徒のように遠巻きに見る方が圧倒的多数だ。とはいえやはり無茶は無茶、発端の現場は見られていなくともデブが騒いでいた時点で人は既に集まっていた。そのこともあり、セシルが早くこの茶番を終わらせようと促したにも関わらず、まだまだ元気に食い下がるソバカスへ呆れて、セシルと同時にオレも溜め息を吐いて。
｢はぁ……セシルが犯人じゃないということは、他ならぬそのデブが一番よく知っているだろう。加えて言えば、そいつがオレを糾弾していたことを目撃している者も大勢いる。なにが気に入らなくてセシルを吊し上げようとしているのかは知らないが、そろそろ自分でも無茶だとは思わないか？｣
『お、おいマシュー…』
顎でクイッとデブを指し示せば、情けなくしょげながらも成行きを見守っていた彼はビクッと肩を跳ねさせてウロウロ視線をあちらこちらにさ迷わせた後に、ソバカスに助けを求めるように見上げる。ソバカスにまで黙れと言われたのが効いているのか、余計なことを口走ることはせず、ソバカスの意見を伺うようだった。大熊のような威勢が今ではすっかりと衰えて、コバンザメのようである。このままここで言い争っていても、教員が見回りに来れば悪くて喧嘩両成敗だろう。それはそれで、オレたちはなにもしていないので腹立たしいことではあるが。