三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
通報 |
いつの間にここは劇団になったのだろうか、と錯覚するほどに次から次へと場面は矢継ぎ早に流れていく。ブライアンはなにも言い返せずオレを睨むだけだったので、セシルとともに部屋に戻ろうとすれば横槍が入れられた。
「はぁ?セシルが?そいつを?今そのデブは、オレのせいだって言ってただろう。大体家庭だけならオレの方が上だ、金目当てなら狙うのはオレだろう。それ以前にそのデブは大人しく金を巻き上げられるタマじゃないだろうに」
おそらく新入生、組み分けの儀式の時に見たような見なかったようななんとも曖昧な記憶に似たような顔があった気がする。そんなソバカスの男子生徒が急に飛び出してきたかと思えば、びしりとこちらを指差して非難を始めた。最初、オレのことを言っているのかと思ったがどうにも違う、目線はオレから外れてむしろセシルの方へと向かっていた。周囲はオレらに注目するが、渦中はオレではなくセシルへと移り変わっており、なにを考えての発言かは知らないが急な冤罪の対象に仕立てられようとしているセシルを庇うように立ち位置を変えると、よく飲み込めていないのかソバカスとセシルを交互に見渡していたブライアンを指差す。
『あっ、いや。セントリ』
ブライアンは湯冷めとともに先程の威勢も消えてしまったのか、歯切れ悪くオレの名を呼んでおずおずと答えようとしたが、ソバカスに発言を被せられて黙っていた。
「"また"?やけに君に食ってかかっているが、あのソバカスは知り合いか?」
ソバカス、名前を知らないのでわかりやすくこう呼ぶことにする。ともかく、彼の発言にオレは疑問を抱いた。また、という過去にもあったかのような言い分だったり、貧乏人だったりと、オレはセシルの出生についてほぼなにも知らないので真偽はわからないが、やけにセシルのことを具体的に批判している気がする。知り合い同士ならば無闇にオレが首を突っ込むべきことではないのかもしれないので、潜めた声でこそりとセシルに聞いて。
『そ、そうだった!ソイツ、組み分けの儀式でやべーことしたソイツ!ソイツがおれを押したんだ!でもセントリックも共犯だぞ!いや、主犯だ!そいつが出てきたせいでおれは転んだんだ!』
「速攻で矛盾するのはやめろ。ターゲットを絞り切れないなら君はもう黙っていた方がいいぞ」
ソバカスに続いてブライアンがここぞとばかりに援護射撃をするが、どうにも彼はオレへの私怨を捨てきれていないらしく、セシルが押したと言ったそばから、オレが出てきたせいで転んだのだとあくまでオレを責める方向に持っていこうとしていた。ブライアンもまた別の意味で慌てているせいで支離滅裂なのだろう、少なくとも計画的犯行ではないようだと思案すれば、とりあえずブライアンはうるさいので黙るように言って。
トピック検索 |