三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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「すけーと、氷の上で滑るだなんてバランス感覚を求められそうなスポーツだな。マグルのことに興味はなかったが、こうして聞いているととても面白そうに思えてくる。食わず嫌いはよくなかったな。受講するつもりはなかったが、マグル学も取ってみるか」
セシルの話にふんふんと頷きながら耳を傾ければ、マグル差別こそしないとはいえ、深入りしようとも思っていなかったマグル界からも学ぶべきところは多数あるのではないかと思い直す。氷の上を滑るなんて、魔法ならば簡単にできるが魔法を用いなければ中々難しいだろうにそれを娯楽として楽しむマグル界は、常日頃父が見下すほど劣った世界ではないと感じられた。父様からは不要、兄様からは是非にと勧められていたマグル学、個人的に受講する優先度は低かったが取ってみていいかもしれない。
「流石だな、そう言ってくれると思っていた。勝敗のあるものは勝った方が断然楽しいに決まっている。相手が気に入らない奴だったら特にな」
思った通りの反応に満足して口端を吊り上げれば、やはりセシルは賢い上に肝が据わっている、偉大な存在の片鱗が確かにあるとヒシヒシと感じて。杖に振り回される子供も多い中、入学式でも既に魔法を使っていたし、才能もあるのだろう。オレも組み分け帽子にいやに褒められたが、セシルとて負けず劣らずの天賦の才を持っている。負け、は端から視野に入れていないが、セシルとならばそこらの木っ端に負けるような未来は見えない。勝敗がある事柄は勝利しなければ楽しくない、今はプライドに雁字搦めだが、だけどもしかすると万一負けてもセシルとならば楽しいと思えることがあるのかもしれないな。
『うわっ!?』
「ん?……なにしてるんだ君は。普通に危ないから周りを見ずに飛び出してくるのはやめろ!」
廊下でもすれ違わなかったのでセシルはまだシャワールームにいるのだろうかと思いつつ、オレも到着して個室に入り、時間も時間なので手早く身体を清めて着替えて出る。行きはすれ違わなかったが、入れ違いになってセシルはもう部屋に戻っているだろうかと考え事をしていたせいで反応が遅れたが、ほとんど同時に隣の個室が勢いよく開き、扉にぶつかりそうになったので半歩後ろに退けば、頭から湯気を立てながら出てきたデブ──ブランケット坊ちゃんがオレを見るなりギョッと目を見開いて、そして慌てたのかスッテーン!と劇役者の演技のように盛大に転倒した。体格が体格なのでシャワールーム内にかなり大きな音が響き渡り。シャワールームを出てすぐの廊下ぐらいまでなら聞こえたであろう派手な音に、オレは顔を思いっきり顰めると呆れた声でブランケット坊ちゃんを叱責し。
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