ホグワーツにて、貴方と共に。(〆）

｢うぇ…。魔法薬なら平気なのに、なんで料理に血と聞くと気持ち悪くなるんだ…。勝手に包丁が暴走しない限りはセシルの指示を聞くよ｣
動物の血は魔法薬の材料としてポピュラーだが、料理と聞くと途端にエグいものに感じられてしまうのは、食事という生命活動だからか。別の文化圏のことだからどうこう言うつもりはないが、馴染みがないオレは想像したら気持ち悪くなり、口元を手で覆って。不安要素は残るが、包丁が独りでに動き回ったりしない限りは、セシルとレシピの指示を守ろうと固く誓い。
｢コーヒーか…一度飲んだことがあるぞ。確かに、アレはポリジュース薬と同じくらいまずかったな。あまりにも耐え難くて、砂糖を大量に入れれば多少はマシになったが｣
昔、父様が好んで飲んでいたものをこっそりと拝借したことがあった。といっても豆から挽くタイプのものだったので見様見真似で作った結果悲惨なことになったが。おそらく作り方を間違えていたからドブのような味になったのだろうが、アレを飲むならポリジュース薬を飲む方がマシだ。ちなみにポリジュース薬とは飲めば他者に化けることができる魔法薬だが、兎にも角にも不味くなりやすいことで有名である。
｢そうなんだよ、カッコイイんだ。よくわかってるなセシル！折角なんだから色々な呪文を学びたいし、使いたい！決闘クラブはそれに最適だな、学べることもきっと多いぞ！クィディッチもやってみたいが、あそこはさらに敷居が高いだろうから、まずは入りやすそうな決闘クラブだな！｣
カッコイイと感じる価値観が同じなことに親近感を抱けば、握ったままの手を興奮から無意識に軽く揺らして、熱意込めてペラペラと話す。これでも年頃の少年らしく、決闘やクィディッチに憧れはあるのだ。とはいえクィディッチはまず学年が上がらないと参加できない上に、中々ハードルが高い。それよりは決闘クラブの方が身近だろう。呪文を覚えて参加できるようになったら、一度はセシルと戦ってみたいな。
｢っと、白熱しすぎたか？君の明日の準備を邪魔しただろうか。残っている荷物の整理を終えたら、風呂に入って眠るか。入学初日だから先生が見回りに来てもおかしくないしな｣
ふと視界の端に入った時計を見れば、少々時間が経過していた。セシルの手を握って拘束していたことに今更ながら気が付けば、パッと離してどこか申し訳なさそうに眉を下げて。