三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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「まぁ、変な奴と同室にされるよりはずっといい。特にあのデブと一緒だったら、たまったものじゃなかったからな」
セシルが喜んでいるのを心做しか優しげな眼差しで見ながら頷き。デブとは、言わずもがなあのブランケット坊ちゃんのことである。名前を知らないし、覚える気もないので酷い蔑称で呼んでいるが、それほど気に入らない相手ということでもあり。あれと同室にされていたら、夜な夜な抜け出して別のところで眠っていたかもしれないと思えば、二人部屋の方がありがたい。
「では先輩、おやすみなさい。あぁ、早く行こう。おちおち休む暇もないな」
『部屋はあっちだよ、おやすみカエルチョコくんたち。くれぐれも寮のポイントは下げないでね』
セシルと同じように鍵を受け取れば、先輩に挨拶をして。セシルに袖を引かれれば、彼と共に急ぎ足で部屋へと向かう。
「おお、二人用の部屋も一応はあるんだな。といってもあまり想定はされていないのか広めではあるが」
指定された部屋の扉を開ければ、大人数用の部屋よりは狭いものの、二人ならば十分すぎる広さの薄暗い空間が現れる。天井からはランタンが吊り下がり、入口から見て左右の壁際に寄せられたベッドは四本足のアンティーク調に緑の絹で編まれた掛布がついている。そのベッドに挟まれた真ん中の空間は広く空いており、緑の地に蛇が描かれたカーペットが敷かれている。壁にはタペストリー、あとはベッドサイドテーブル、クローゼット、棚などがそれぞれ並べられており、生活において大きく不足するような事柄は少ないだろう。
内装をぐるりと見渡して、月明かりが差し込む天窓を見上げれば、綺麗な月がよく見えた。耳をすませば、外の湖の波が打ち寄せる静かな音が時々聞こえてくる。
「右側と左側、どちらもそう変わらないだろうがセシルはどっちがいい?」
備品も家具も、同じように設えられてある。左右のスペースで大きな違いはないだろうが、セシルの意見を聞きたいと左右を指差しながら問いかけて。
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