三丁目のミケネコさん 2022-02-21 22:59:24 |
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「そういう奴もいるだろうが、一人許せばまた一人と際限がなくなるんだ。それにやっかみも買うだろう、くだらないことで妬まれたくはないな。ほら見ろ、あそこの随分恰幅が良すぎる坊ちゃんなんか早速オレのことを睨んでいる」
交流が嫌いなわけではない、ただそこにまとわりついて来る様々な感情が厄介に感じるだけだ。生徒同士の範疇におさまるコミュニケーションは積極的に取るべきだが、それ以上の個人的なものが多分に含まれた関係の取捨選択はしていくべきだとオレは考えている。でなければ、こちらに非がないのだとしても悪感情を抱かれかねないからだ。その例えとして出した、縦にも横にも大きい男子生徒をぞんざいに親指で指してみて。
(女子の周りをウロチョロして、相手にされなかったら嫉妬とは女々しいことこの上ないな。オレが女子たちを押し付けた先輩にはビビってるのも情けない。悲しいぐらいに情けない)
俗に言う小物キャラにすらなれないぐらいの小物感漂う彼ぐらいなら、なにか仕掛けてきても簡単に潰せそうだが、上級生には目をつけられたくは無い。
「そうだな、ルームメイトは静かな奴だと有難いがどうなるだろうな。あと、本当に辛くなった時は、わざわざ平気そうには振る舞うなよ。処置が遅れたら困るからな」
(言葉では疲れたと言っているが、態度には全然出さないんだな。いるんだよな、こうやって人には弱味を見せないようにする奴。兄様のように相手を心配させないためか、オレのように弱味を他者に晒したくないかのどちらかなんだろうが、心配になるんだよ)
下手な魔法薬を飲むよりも、休息をしっかりと取る方がずっと効果がある。早く寝ようという言葉に同意を返し、後はルームメイトとなる人物がまともな人柄であることを期待して。そして、セシルが元気さをアピールするように見せた仕草を指して、言葉を続けて。素直に、心配になるからと打ち明けたところで兄様のように人に心配をかけたくないタイプなら受け入れてくれないだろうから、適当に合理的な理由を取り繕う。
「はぐれたら行方不明、だなんてはしゃぎがちな新入生への釘刺しじゃなくて本当の話かもな?いつの間にか、退学以外で人が減っていないといいが」
セシルが近づいてきたので、彼に合わせるようにさりげなく歩調を落として。緑のローブ集団の後ろに付きながら、先程の監督生の言葉を思い返して、夜の古城というのも相俟って少々ホラーちっくな雰囲気を楽しみながら半笑いでセシルに語り掛けて。
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