確執（〆）

…もう寝たん？
（勘というなんとも曖昧な言葉に、その鈍い勘のせいで自分に付け込まれたくせに、と心の中で悪態をつき。おやすみなんてかわいい言葉ではなく彼らしいぶっきらぼうな発言のあと、すぐに寝息が聞こえると反応は期待していないが一応上記のように呼びかけてみて。その後、そろりとベッドから降りて布団に横たわる相手の傍へ移動すると安らかな寝顔をじ、と覗き見。）

( 相手の問いかけはもう意味を持たず、完全に意識を手放している。横に誰かの気配を感じるも、それも夢現で、｢んー…｣と声を漏らし、なんとなく寝返りをうつ。元から一度寝てしまうと中々覚醒できないタイプであり、朝起きるのにも一苦労なのだ。 )

おやすみー…。
（気持ちよさそうに寝息を立てている相手にちょっかいをかけるべきでないと判断したのか、短い髪の感触楽しむように撫で、寒くないよう毛布をかけ直してやってからベッドへ戻り。枕元に置いてあったスマホの通知を確認したあと、手探りで電気のリモコンを取って消灯し、少し時間が経ってから意識手放して。）

んん…

( 朝方、目を覚ますと意識がはっきりとしない中、辺りを見渡す。自分の部屋ではないことと、近くのベッドに寝ている相手の姿を見れば、昨日の夜のことが思い出されなんとも言えない気恥しさが残り。立ち上がると、相手が寝ているベッドを覗き込み、ぐっすりと寝ている相手を起こしてはいけないと思いながらも、相手の綺麗な顔立ちをじっと見て。)

…ん…、…おはよ…。
（寝る時間が少し遅かったこともあり、相手が頭上で自分の顔を覗き込んでいることに気付かずすやすやと寝息を立てており。暫く経ってぴく、と瞼を動かしたかと思うとゆっくりと目を開き、視界の端に映った相手の方へふにゃふにゃした笑みを向け、寝起き特有の掠れた声で挨拶を。）

はよ…。

( 寝起きの顔は幼いなと相手の顔をじっくり観察していた矢先、相手が目を覚ましたので少しびっくりして、起こしてしまったかと思うも、挨拶をされれば短く返答し。相手の顔を見ていたことを気付かれたかと思うも、起きたばかりの相手にそんな様子はなくほっとし。時計を見ればまだ早い朝の時間。そして休日である。もう少しゆっくり寝ていればよかったかと思うが、起きてしまったものは仕方ない。)

んー、ねっむい……蓮司さん…早起き…。
（覚醒している相手とは対照的にまだ意識はぼんやり寝ぼけており、昨日の飲み会での出来事や彼とのやりとりをゆっくり時間をかけて思い出しつつ。欠伸を一つ漏らすと自分の隣の空いたスペースをぽんぽんと叩いて、遠回しに相手へ此方に来るよう指示し。）

あー。目が覚めちまって。
わるい、起こしたか？寝てていけど。
( 相手が空いたスペースに来るよう指示するのには、遠慮がちにベッドの縁に腰を下ろし。やはりまだ寝ていたいのだろうか、眠そうな相手を起こしてしまったことには少しだけ申し訳なさそうにする。 )

ん、ん…おはようのちゅーがまだですけど。
（布団ごともぞもぞと動き、ベッドの縁に腰掛けた相手へ擦り寄っていくと昨日呑んだ条件を覚えていないのか、彼の腰へ両腕回してしがみつき。まだ寝起きでほかほかの体を相手の背面へ密着させ、柔らかい頬は硬い前脚へ押し付けて。）

おいっ…寝ぼけてんのか。

( 不意に背後から伸びてきた腕に驚くと、昨日のことが脳裏に鮮明に蘇り、顔を真っ赤にして相手の行いに悪態をつく。しかし暖かい相手の体温が妙に気持ちいいなどと一瞬でも思ってしまったことに、自分はどうしてしまったんだと深く溜息ををつく。)

寝ぼけてねーもん。…、…せんぱーい、はやく。
（腰に回した腕の力を強めてより密着すると、腰と前腿辺りに犬のように頭をぐりぐりと押し付けて否定の意を表し。その後眠たげに目尻が垂れ下がった瞳を頭上の相手へ向け、媚を含んだ声でキスを強請り。）

…っ…。

( 恥ずかしげもなくよくこんなことが出来るもんだと、片手で頭を抑える動作をすれば、このままでは退いてくれそうもないので、相手に近付くと、額に短く口付け、顔を真っ赤にする、)

…場所、違うよ。
（想定外にふに、と額に触れた柔らかい感触に目を丸め、閉じかけていた瞼を開けると目の前には赤面した相手の姿があり。片腕を伸ばして相手の首へ引っ掛け、腰を折らせて無理に此方と距離を詰めるような体勢をとらせた後、動物を躾けるときのような低い声で囁き。）

…っ、

( 急に相手との距離が近くなったことや、相手の低い声に思わず胸が鷲づかみにされたような感覚に陥る。なぜ、こんなに相手に振り回されているのだろうかと後悔も後を絶たないが、そんなことより今は目の前の相手から離れないと、自分が自分じゃなくなりそうな気がして。ゆっくり相手に近付けば次は唇にそっと触れるだけの口付けをして。)

ん、…
（首に引っ掛けてだらんと脱力していた手を後頭部へ移動させ、ぐっとこちら側に引き寄せて唇がこれ以上離れてしまうのを防ぎ。小さく首を伸ばし何度か角度を変えて軽く唇を重ねた後、固く一文字に結ばれた相手の唇の合間を硬く尖らせた舌先でなぞって。）　　

っん…！、
( 唇が合わさった瞬間に後頭部を抑えられれば、逃げようにも逃げることが出来なくなる。どうしたらいいのかと考える余裕もなく、相手の舌先が自分の唇の隙間を準えていることに、眉間に皺を寄せて身体を強ばらせる。)

ふは、…キスするときは体の力抜いて、…俺のされるがままになってたらいいよ。そしたら、キスうまくいくから。
（警戒心が強まってしまったらしく、わかりやすく強張る体に思わず小さく笑い声漏らして。首に回してない手で赤子をあやすかようにとんとんとリズムを刻み優しく相手の体を叩きながら舌を侵入させないよう結ばれた唇を舌先でつん、とつついて。）

んな事言われても…っわかんねぇよ。
( 相手からの望んでもいないアドバイスには、どうしたら力が抜けるのかと疑問に思いながら。あやす様な相手の手にはふっと固く結んだ唇から反抗的な言葉しか出ず。相手の言うようにできたらどれだけ楽になれるかと思いながら、舌先が触れる自分の唇が熱く溶けてしまいそうな感覚を感じているうちに無意識に緩めてしまう。)

は…、
（口元が緩んだタイミングを見計らって舌先を滑り込ませると、普段人に触れられることのない下唇の内側、それから歯茎に沿って焦らすようにゆっくり舌を這わせ。舌先から伝わる熱に理性が焼き切れそうになるが寸のところで平常を保ち、動揺しているであろう彼を伏目で見つめていて。）

…！
( 侵入してきた相手の舌先には抵抗する術も持たず。嫌だったキスがいつの間にか｢気持ちが良い｣という感覚に変わっていることに気付き、唇だけでなく全身が相手によって溶かされていく。ぎゅっと今まで閉じていた瞼を薄ら開けば、相手の視線と絡み合い、羞恥心に駆られる。きっと自分は今情けない顔をしていると思うと、再びギュッと目を閉じて。)