匿名さん 2022-01-26 21:20:43 |
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おれはぬしを知っている。だが、ぬしはおれを知らぬだろうなあ。
( 柔らかく細めた瞳、弧を描く唇。花を慈しむような愛情溢れる表情で迎えた其の子は、しかしおれを見て身体を強張らせる。まっくろな瞳で注意深くこちらを観察する様子は、まるで道に迷った幼子のようだ。手を差し伸べ、頭を撫でてやりたい気持ちにさせられるも、そうして更に怖がらせてはいけない。今は尋ねられたことにだけ答えようと、相も変わらぬ喋り口調で返答を返す。この言葉がおれと其の子の関わりを示す、もっとも的確な答えであることに間違いはないけれど、謎かけのような返答は彼女をますます混乱させてしまっただろうか。小動物のように怯えて身を守ろうとする様子もまた愛らしいが、あんまり意地悪をして嫌われてしまっては悔いても悔やみきれぬ。何より、せっかく会いにきてくれた愛し子に対する仕打ちではない。勿体ぶることでもなし、これ以上彼女の瞳が不安を灯さぬよう、早々に正体を明かしてしまおうと六十度ほど両手を広げて )
おれはここに祀られている、五穀豊穣の神。祈梛だ。
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