匿名さん 2022-01-24 20:12:42 |
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(声を張る姿はまるで彼女とは似つかない──故に、目の前の相手の怒りにガンと頭を殴り付けられて、多少の冷静さを取り戻す。彼女が《愛しき人》というのは己の中では捻じ曲げることのできない事実であり、彼女の主張に素直に頷いてわかりましたと言う訳にはいかないが、彼女にとっては突然見知らぬ場所で目が覚めて知らない男に訳の分からないことを言われているのだと気が回り。こんなこと、少し考えれば分かることだというのに思い至らなかった辺りも含めて、気持ちが舞い上がって制御し切れていないのだ。少しでも自分を見つめ返す余裕があったなら、もっと上手くやれた。そんなことを今思っても、ファーストコンタクトから今に至るまで失敗続き、彼女からの印象は最悪だろうということは覆らない)……そう。そうだね(困ったように眉を下げ、端的に彼女の言葉に理解を示すような言葉を転がしながらどうしたものかと思案する。勿論、帰す気なんてさらさら無い。ずっと幽閉するつもりもないけれど、外に出すのは彼女がここに戻ってくると確信を得てからだ。先程までの自分であれば『帰るなんて、どこへ? 君の帰るところはここだろう』と、言ってしまっただろうが怒っている彼女を態々逆撫でするのは愚策だ。取り敢えず今、彼女を止められればそれでいい)君の足では夜の森は抜けられない、森には獣もいる。君を危険に晒したいわけじゃないんだ。……今帰るのは待ってくれないか
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