匿名さん 2022-01-24 20:12:42 |
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(ローザ、と呼ぶ声が優しく耳朶を打つが、もちろんそんな名前ではないし、知り合いにもそのような名前の人物は存在しない。思わず訝しげに眉を寄せて見つめ返し、自身の名を告げて反論しようと口を開き)いいえ、わたしは――っ…(視線の先、その瞳の深淵へと捕らわれるような感覚に、思わず告げようとした言葉が喉に張り付く。感じたのは理屈ではない、もっと根源的な恐怖。しかし一つ瞬きをする間に窓の外へと視線を向けた彼からは、もうそんな気配は感じられず、残ったのは全力疾走後のように、やたらと早鳴る自身の鼓動だけで)いえ、だから……っ、わたしはこの場所のことも、あなたのことも知らない!(何度も人違いだと告げているにも関わらず、”思い出す”などと言ってくる時点で、こちらの話を一切聞いていないことが分かる。先ほど感じた恐怖が少しばかり薄れてくれば、その反動なのかふつふつと怒りが込み上げて来て、思わずその感情のままに素の口調で声を張れば、眦を吊り上げてほとんど睨むように見つめて)わたしの名前はアマーリエよ! その”ローザ”って人とは別人なの。――分かったらそこを退いて。わたし、早く帰らないといけないから。
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