門番 2022-01-22 17:59:35 |
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>33 ヴァローナ
( ずっと毎日のように開催されるお茶会。それは昔も今も変わらずにそこにあった。だからこそ、劣化が遅いのかもしれない。変わり果てた風景の中、お茶とお菓子だけは輝きを放つ。たとえ悲鳴の聞こえるような中でも、温かさと束の間の休息を与えてくれる。普段は大して顔を出すことがなかったが、たまにはいいものだ。ほぼ無表情であり、言葉少なに紅茶を啜っていたそのときだった。まるで幼子──否、この場合は鴉のときの姿のように差し出されたクッキー。悪気のない行為を突っぱねるのは躊躇われた。一方で素直に受け入れるのもいかがなものか、と頭の中でほんの少し考えを巡らせ。結局のところ彼女の手から食べ、目を逸らしながらぼそぼそと呟き。人慣れしていない己のことである、耳まで真っ赤になってしまっているかもしれず。彼女の過ごす小さな家へと連れていく使命は本当であるが、あまりにも露骨な話題転換は不自然でしかなく )
……美味い、な。そうだ、お前が過ごす場所、後で案内してやるから。
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