刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 相手から視線を外す事はしなかった。ただ、静かに返事を待つ事数分。余りに落ち着きを払って溢す様に落とされた言葉に僅か眉を微動させると「違う。」と、先ずは真っ向から否定し。「幻覚の1つや2つ見たからと言ってエバンズさんが可笑くなった訳じゃない。…それだけ苦しいからでしょ?心が限界だからでしょ?__私が1番エバンズさんの近くに居る。その私が違うって言うんだから何も可笑しくなんかない。」懸命に訴えたのは或る意味強気にも取れる内容。それが本心だ。何時かの日、アダムス医師では無い別の医師が相手に普段服用している物よりも何倍も強い安定剤を処方した時、吐き捨てた言葉を忘れた事は無かった。精神異常者の様に言い、まるで薬漬けにするかの様な。違うのに__相手は不器用で、優しくて、繊細なだけ。それでいて自分自身の負の感情に蓋をして、心を殺し罪を全て受け入れようとする。だからこそ、そんな相手だからこそ、切望した“解放されたい”と言う気持ちを尊重してあげたい。けれど__「…強い薬での解放には、目を瞑れません。」一度奥歯をきつく噛み締めた後に絞り出す様に伝えた言葉は相手の心を切り裂いただろうか。絶望のドン底に落としただろうか。「私に出来る事は僅かだし…もしかしたら何も無いかもしれない。寄り添うだけじゃエバンズさんの苦しみを取り除く事は出来ないってわかってるけど、それでも薬以外でエバンズさんが少しでも楽になれる事があるなら何だってする。犯人に言いたかったであろうどんな言葉も聞くし、夜中に一緒に起きる事も構わない。だから___もう少しだけ私と一緒に立って。」視界が滲み声に涙が混じる中、“もう良い”とは言わない。妹を、多くを亡くし10年以上苦しみの真ん中で生きている相手を前に血も涙もない残酷な部下だと思われたとしても。何時かの日、暗闇の底に居た己に相手が掛けた“立ち続けろ”と言う言葉を、思い出すだろうか )
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