刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 相手の隣で視線を絨毯の敷かれる床へと落とす。広がる染みが何かなど考えるまでも無い。艶やかな髪の散り具合も、寸前まで恐怖を宿していてだろう光を失った緑眼も、これだけの日数が過ぎても昨日の様に思い出す。___不安定に揺れる静かな相手の声が静まり返ったコテージの中で大きく聞こえた。刑事に出来る唯一の事は犯人を逮捕し事件を解決する事。それが被害者が天国で喜んでくれる事に、残された遺族の心の痛みを僅かでも軽減する事に繋がるだろう。そう信じるしか無い。だが、実際どうだろうか。犯人逮捕は勿論望まれる事だ。だがそれを果たしたとて、亡くなった人が戻る事は決して無いのだ。遺族が、被害者本人が心の底から望む事はたった1つ、“今まで通りの日常”であろう。それを叶える事はどうしたって出来ない。「……私達は、無力だね。」相手の言葉を聞き、思わず漏れたのは余りに苦しい現実。「…身勝手な理由で奪って良い命なんて、そんなのある筈無いのに。…昨日まであった日常が急に消えて、それが、その傷が、簡単に癒される筈なんて無いのに__何で…そんな簡単な事もわからないで、」絨毯を見詰めたまま続けた言葉は途中喉に引っ掛かり、音を止めた。拳を握り締めた掌に爪が食い込み、その痛みが心の痛みと繋がる。相手は今、どんな顔をしているだろうか。見上げる事が何故か躊躇われ、深く息を吐き出した後、拳の解いた手を隣の相手の背に軽く添えて )
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