刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( ______事件解決までの道のりは長く、当初の想定よりもかなりの時間を要したと言えよう。しかし最終的に掴んだ証拠から容疑者として浮上した、カフェの客だった男の偽装されたアリバイを崩し、逮捕状を男に突き付けたのが今朝の事だった。“俺じゃない”と何度も無実を訴え喚いていた男だったが、隠蔽工作や偽装されたアリバイの証拠をひとつずつミラーが提示して行くうちに大人しくなり、その後『仕方なかったんだ!』と再び喚き始めた。犯行を認める言葉に深く息を吐き出した後、「……連行しろ、」と控えていた署員に指示すると暴れる男は手錠を掛けられ車に乗せられた。車がひと足先に走り去り、相手と2人になった家の前でもう見えない車の方向を向いたまま、終わったのかと妙に冷静に考えていた。喜びや達成感とは程遠い、犯人を逮捕しても尚胸の内に渦巻くのは虚無感に近い感情。犯人が明らかになり、身勝手な動機や浅はかな人間性を目の当たりにした事が寧ろ虚無感を増長させたと言っても良いかもしれない。“彼女”はこんな男の、一時の感情によって殺されたのか、と。外で吸う事は滅多に無いのだが、ジャケットの内ポケットに入れていた煙草を徐に取り出し火を点けると、犯人の家の敷地で階段に腰を下ろして煙を吐き出した。やりきれない感情をどうにかしたかったのだが、煙草の煙で身体を満たした所で気が晴れる訳でもない。「……事件は解決した。…犯人は裁かれ自分の罪を償う事になる、」相手にも労いの言葉を掛けられぬまま、自分に言い聞かせるかのように言葉を紡いで。 )
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