刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
|
通報 |
( 狭い車内に相手の苦しみに喘ぐ呼吸と、繰り返される“セシリア”を呼ぶ声が広がる。助けられなかった事を懺悔する様に何度も何度も譫言の様に繰り返される彼女の名前は、余りに悲痛な想いを纏っていて耳を塞ぎたくなる程に心を乱される。視界が滲んだのを唇を噛み締め、ハンドルを強く握る事で抑え込むと、そこで漸く前方車両が緩やかに動き始め「…もう抜けられるからね。」と、一声掛けて車を発進させ。前方を見詰めある程度の車間距離を保ち運転をしていた為、相手の手が水のペットボトルに伸びた時にはもう既に何もかもが遅かった。取り出された薬の量も過剰で、それを飲んでも良いだけの時間は未だ経っていない。けれど……制止の言葉は音にならなかった。仮に車が停まっていたとして、それでも薬を飲むなと言えただろうか。署内でも、車内でも、あれだけ苦しみ、それからどうしても逃れたいと言う相手の気持ちがまるで流れ込む様に伝わってしまった。後に来る副作用の怖さなど、考えられない程に苦しかった筈だ。奥歯を噛み締め、“見なかった事”を決めた心は重く揺れる。___やがて一本道を抜けた先にあるカフェが見えて来たのだがスピードを緩める事はしなかった。犯人の足取りが掴めず捜査が難航している事は百も承知なのだが、私情だなんだと言われても今優先すべき事はカフェに聞き込みに行く事では無い。「__エバンズさん、降りて。」車を停めた場所は病院の駐車場。未だ過呼吸や身体に纏わりつく痛みが尾を引く倦怠感が続いているだろう相手に真剣な表情でそう告げると、自身が先に降りた後に助手席側に回り扉を開ける事で促して )
| トピック検索 |