刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 顔を覆い床に蹲る相手の唇から漏れるのは妹の名前と繰り返される謝罪の言葉。当然ながら相手の意識は“今”に無く過去を__“あの時”を彷徨って居る。アンナの遺体とセシリアの遺体が重なったのは明白で、この発作を伴うフラッシュバックが短い時間で治まらない事もわかるものだから、今出来る最善策は。__「少し離れるよ、直ぐ戻って来るから待ってて。」落ち着け、落ち着け、と自分自身に言い聞かせながら相手の背中から手を離し一度寝室を後にする。アンナの遺体の横を通り抜け、玄関から入って来た検視官と顔を合わせると「…すみませんが席を外します。直ぐに戻るので先に検視をお願い出来ますか、」と告げコテージを出。足早に向かうのは湖の手前に停めた自身の車の元。相手の姿を探すのに室内を歩き回った際、ゲスト用寝室の廊下の突き当たりに裏口を見付けたのだ。その裏口の横に車を停め直し、再び正面玄関から相手の居る寝室まで戻って来ると、「__エバンズさん、苦しいのはわかるけど立って。此処に居ちゃ駄目、」床に蹲ったまま尚も謝罪を繰り返す相手の両脇に腕を回し上半身を起こす。身体に痛みが出ている事は承知だが、此処に居続ければ時期に検視官や他の警察官がやって来て相手にとって最も見られたくない姿を見られる事になる。身長差も体格差も違う成人男性を持ち上げる事は一苦労なのだが、放置の選択肢がある筈も無く、殆どチカラの入らぬ相手を支え半ば引き摺る様な形で壁伝いに一歩一歩廊下を進み裏口から外に出ると、停めた車の助手席を開け崩れる形で相手を座らせ。肩で大きく息をしながら、席のサイドにあるレバーを引き背凭れを倒す。鳩尾に負荷の掛からないだろう所で止め、そこで漸く運転席に移動すると、未だ少しばかり上がる呼吸のまま「…聞いてエバンズさん、あそこに居たのはセシリアさんじゃない!」と声を掛け肩を擦るも、この状態の相手に届く確信は無かった。同時に相手がこの事件の捜査指揮を執るのは絶対に駄目だという確信もあり。水を飲む事も出来ないだろう相手が薬を飲み込める筈も無く、今は僅かでも落ち着くのを待つ事しか出来ない絶望的な時間が続き )
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