刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 記憶が悲しい瞬間で途絶える事ほど辛いものはない。それまでがどれほど幸せな笑顔で溢れていたとしても、残酷にも一瞬にして全てを塗り替えられてしまう。その奥にあった笑顔を思い出す事さえ酷く難しくなってしまうのだ。相手の瞳に浮かぶ色は、穏やかな、楽しげな、明るいものであって欲しい。其れは決して、今は亡き妹と重ねて“妹の分まで”と願っての事ではなく、相手自身が幸せであって欲しいと願うから。言葉を発する事はしないままにグラスの赤を飲み干すと、くらりと視界が揺れる。薬が効き始めている事と僅かな酔いとが結び付いたようで、不快な痛みは薄れつつあった。「…せめて2年前のように、人並みに働けるように精進する。」とひと言告げると、ワインの瓶にコルクの蓋を閉めて。 )
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