刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 完璧な警部補で在る事を求められている訳ではない、と相手は言った。別の誰かを据えれば非常勤からのスタートになる事もなくよりスムーズに事は運ぶだろうが、其れでなくとも良いから戻って来ないかと打診されている______それは身に余るほど有難い事だ。“自分がどうしたいか”。意識が途切れそうな苦痛に耐える間、懸命に呼び起こすのは全てレイクウッドの記憶だ。車窓を流れる緑はワシントンの中心部にはない。湯気の立つ紅茶が入ったマグカップも、此方ではあまり使わなくなっていた。本部よりもずっと小さな建物も、執務室に掛かっていた風景画も、出張先で見たステンドグラスも、緑色の瞳も。その全てが、夜の暗闇の中であっても自分を正しい場所に引き戻す。「______レイクウッドに、戻らせて下さい。」再び相手を見詰めた瞳に不安定な揺らぎはなく、いつも通りの光が宿っている事だろう。レイクウッドは自分にとって“戻りたい”場所だ。「本部に来たいと我儘を聞いて頂いたのに、申し訳ありません。」正に我儘を聞いてもらった相手には何も恩を返せずに再びの異動となる事を謝罪する。けれどもう一度刑事として、レイクウッドで働ける事は間違いなく喜ばしい事だった。 )
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