刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 吹き抜ける風、木の葉が擦れる音、鳥の囀り。何度来てもこの霊園はとても静かで、まるで此処だけ時間が止まっているかのような錯覚に陥る。白い野薔薇の絡んだ墓石の前に供えられたリップグロスを見て、もし妹と相手が顔を合わせていたらどうなっていただろうかと思う。2人で化粧品の話にでも花を咲かせるのだろうか。そんな事を考えている間、事件の記憶は遠くに押しやられる。今想像の中にいるのは、明るい笑顔を湛えた生前の妹、其処に悲壮は感じられない。一切乱れのない幸せそうな妹の姿を鮮明に思い出せる事は多くはなかったと言うのに。墓の前で手を合わせ、静かに祈りを捧げる。命日に来られなかったことへの謝罪、刑事を辞める道は選ばないという決意、相手が供えたリップグロスの事。ずっと望んでいたように、きちんと妹と向き合って報告する事が出来たという安堵感が胸に落ち。 )
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