刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 静かな病室の中で確かに吐露されていく相手の思い。__あの事件の犯人は罪を償う事無くまるで残された者に全てを背負わせるかの如く自害し、何年、何十年と癒えぬ絶望を知らぬ顔。大切な者を喪った遺族達は怒りも憎しみも悔しさもぶつける相手を無くし、結果的にあの事件に関わりのある今唯一生きている相手へとその憎悪を向ける。行き場を失った遣り場の無い思いをどうやったって消化出来ない気持ちが少しも理解出来ないとは言わない。言わないが。世間が傷付ける相手もまた、刑事であると同時に同じ痛みを知る“遺族”なのだ。「……わかってる。報道の全てが嘘だって事も、エバンズさんの気持ちも。」世間が信じた全てが嘘である事をちゃんとわかっていると、相手を信じていると伝えつつ、“苦しかった”には否定する事無く頭を縦に動かし。これだけの気持ちを吐露して尚、瞳を合わせないのは相手の心に残る最後の強がりか。無理にその顔を覗き込む事をせずに椅子の背凭れへと体重を掛ければ、目元から静かに手を離し。「__セシリアさんと2人で話す?」今此処に在るのは妹では無く腕時計。セシリアでは無いし、微笑む事も言葉を返してくれる事も無い。けれど、それをわかっていて時計に視線を落とせば、“彼女”に言いたかった事があるのならば、2人きりで居たいのならば、と微笑んで )
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