刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 因縁の同僚は程なく応援対応の期間を終え自分の署へと戻って行ったのだが、平穏な時間は然程長くは続かない。1年の中で最も気分が沈む日_____あの事件の起きた、妹の命日が近付いていた。事件から12年経つ事になる訳だが、それでも気持ちが楽になる事も、世間があの事件を忘れ去る事もない。“其の”情報を目にしたのは事件の日から1ヶ月前の事。街中で偶然目にしたワイドショーの画面に“アナンデール事件”という文字を、そして“衝撃の新証言”という表記を見つけたのだ。今日発売の週刊誌が報じた、あの事件で子どもを亡くした母親の証言として当時事件に関わり今も警察に重要ポストに着いている“警察官E”の心無い言動が語られていた。その人物が自分を指している事は直ぐに理解できたが、報じられているのは身に覚えのない事ばかりで思わず絶句する。遺族の言う“警察官E”は、打ちひしがれている遺族のの自宅を訪れ「あの事件は防ぎようの無いもので、お子さんが亡くなったのは仕方なかった。泣いていても死んだ子は戻らない」と冷酷にも吐き捨てたと言うのだ。更に警察に責任は一切無いと主張し、自ら命を絶った遺族の事を“面倒くさそうに”話に挙げ、貴方たちもそんなふざけた事をして警察の手を煩わせるなと言い放ったと。そんな男が、罪悪感から死を選んだり職を退く警察官が多い中その事件を踏み台にして、未だに警察の重要ポストに着いている_____と。頭を殴られたような衝撃だった。この“遺族”は何を語っているのか。週刊誌やワイドショーは何故それを“事実”として扱っているのか。---署に戻り部屋に1人になってもその事ばかりが思考を邪魔して仕事が一向に手に付かなかった。 )
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