名無しさん 2022-01-13 17:50:57 |
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……なん、だ此処は───すまない…、助かる。
( 段々と重くなる足取りは疲労か怪我のせいかそれとも、何れにせよあまり長くこの茶番に付き合ってやるつもりはなく勘づかれているかは別として少しもの望を託して白衣のポケットに入れていた小型の通信機から救難の信号を発信してはみたが無事に届いただろうか。肌に纏わり付くような厭な空気感は焦れったく、鼻に触れる香りは決していいものとは言えず、喉につかえた緊張感は気道を塞いでいるようで。辿り着いたその先は何とも質素な空間で、ざっと見渡しても真ん中の異様な存在感のある球体に目がいってしまう。何故このスラム街を監視するかのように映像が流れているのか、集会所のような役目なのか数人の人が集まっているのを見て此方に気が付いたのを感じ取れば僅かに後ろへと足を戻し。頬に伝う汗は怪我のせいだと言い訳したいが明らかに緊張感が勝っていて。ぐったりと両腕に抱えられる眼下の相手を見下ろしつつはっと空気の振動に気がついて顔を上げてはひとりの女性が此方に近付いてくるのに気がついて思わず腕に力が籠り。いざとなれば相手だけでも逃がさねばならない、その場合どういった手順でどういった行動がより最小限に速やかに動けるだろうかと頭の奥が熱くなるのを感じた所で差し出されたそれに思わず止まる。己への自嘲か機械の向こう側に居るであろう男への問い掛けか、呟いたそれは空に消えるが差し出された手当の道具に視線を下ろし一度息を呑み込んでから礼を言うと服からも伝わる程冷たくなってきている相手を一刻も早く救わなければと抱き抱える腕に力を込めて片手を僅かに伸ばしてはそれを受け取り )
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