名無しさん 2022-01-13 17:50:57 |
通報 |
……ありがとう、ごめんなさい。
( いつもなら頬を撫でられた際に可愛げのない悪態を吐いただろうが、眠気を伴う倦怠感と痛みはそれすらさせてくれずにただ頷くのが精一杯で。普段の態度から想像できない礼と共に謝罪の言葉を口に出せば、抱きかかえられるがままに階段を降り。ぐらぐらと揺れる視界と意識に耐えきれず思わず目を瞑れば目的地に着いたのか歩みは止まった。湿った、何処か血の臭いがする階段を降ればその先に存在したのはかつて倉庫として使われていたであろう巨大な空間だった。テーブル、ソファー、ベッドなど生活を営む為の家具が纏まって三箇所ほどに置かれている。目につくのは日常的な風景の中、異様な空気を纏いながら佇んでいるのは中央の巨大な球体のコンピュータだろうか。電気を繋ぐ管がまるで血管のように繋がっており、球体の液晶にはスラム街各所の映像が映し出されている。また所々に人々が点在し談笑や読書など其々思いに過ごしていて、コミュニティに属している者として何ら変哲のない振る舞いをしていた。何人かが怪我人二人に気がつくと直ぐには近寄ろうとせずに少々警戒するように距離を取り。何かを話し合うような素振りをした後に一人の女性が箱に入っていた二人分の血液パック、包帯、止血用の糸などの医療処置ができる道具を持って此方へと歩み寄り渡すように静かに差し出し。彼女の瞳には確かに感情が宿っておりながらも、少々ぎこちないその動作と人肌ではない機械的な冷たさはさながら先程のアンドロイドのようであった。 )
トピック検索 |