Devil 2021-11-21 21:57:27 |
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……“今は ”じゃないだろう。
( 相手の呟きに、布団に重ねられた手を僅かに震わせた。大きくなっていた種が破裂したような感覚があれば、頬へ静かに涙が伝った。相手に聞こえるか定かではない声で上記をつぶやくと、重ねていた手を退ける。
相手はきっと何かに悩んでいる、力になりたいが、凡そ、何に悩んでいたのか、憶測だったものが今、相手の言葉を受けて勝手ながらも確信に変わった気がした。
_もう、天使である自分が、嫌いになったのだ。
元々、自分が能天気にも話しかけたことがきっかけでこの関係が始まった。自分は最初から悪魔や天使などの種族に囚われる考え方は好きではなかったが、相手はそもそも天使が嫌いだった。
久し方ぶりに地獄での仕事に専念して、やっぱり天使の存在が煩わしくなったに違いない。
「 ごめんね 」とだけ、乾いたように笑いながら涙を拭えば、逃げるように腰を上げて、荷物は置いたまま、家を出た。
似たように喧嘩をしたこともあったが、それとは比べ物にならないぐらい胸が苦しく、涙が流れる。だって、もう会ってはいけないと思ってしまったから。
__まだ日は高いと言うのに、此方は雷雨に打たれ沈んだように下を向いたまま、濡れた頬を寒風に晒しながら一人、街の中を歩いていた。 )
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