親愛なる家族たちへ。（　日常 ／ 微ファンタジー ／ 人数制限あり　）

　＞23　メイナードさん

う、うーん、どうかしら……？　頑張ってはみるけれど……。
（　上体を前傾させて、シャツについた絵具をじっと観察する。先程彼が話した通りならきっと付いたばかりだろうし、水彩絵具なら根気強く洗えば落ちるかもしれない。しかし、安易に〝大丈夫〟だなんて言ってぬか喜びさせるわけにもいかず、困り顔と共に曖昧な返答をするに留まる。……それにしても。上体を元の位置まで起こし、口元に手を当てながら小さく笑う。彼がこうしてシャツを彩って帰って来たのはこれが初めてではない。景色が色褪せる曇天の中、私の目には、彼のシャツだけが鮮やかな色彩を持っているように見えた　）
また素敵なシャツが一枚できたのね。落としてしまうのが少し勿体ないわ。


　＞24　ルキア

ルキア。またトレーニングしているの？
（　今日の分の薪を全て割り終えて、斧を倉庫へと片付けに行く道すがら、人の気配を感じてひょいとそちらを覗き見る。そこにあったのは、トレーニング中のルキアの姿。邪魔しては悪いかとも思ったけれど、その表情が何だか思い詰めているようにも見えて、柔らかな笑顔でそっと声を掛ける　）


　＞25　アレクシアさん

（　雷が鳴っている。外にまだ雨粒は見えないけれど、もうすぐ降り始めるだろう。雨が降り込んではいけないと、一つ一つ部屋を回って戸締りを、それから家族の居場所を確認してゆく。二、三階の窓は全て閉め終えた。けれど、アレクシアさんがどこにも見当たらない。一階かしら、と階段を降りていると、丁度玄関に彼女の姿を見つけた。もうすぐ雨が、と声を掛けようとしたところで、彼女は外へと駆けてゆく。その瞬間に頭を掠めたのは、彼女のここへ来る前のこと。まさか、また命を投げ出すようなことをしてしまうのではないか。そう思った時には私も駆け出していて、悲鳴のような声で彼女の名前を呼ぶ　）
──アレクシアさん……！