セイチャットファンさん 2021-08-12 18:09:13 |
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てっ、てんっ、たたたんっ、たんたん、たんっ……
(かんっ、かんっ、かんっ。
赤くどんよりとした雲が昼間でも空を覆い薄暗い中、小気味よい音が響く。
京都駅前、広場。
……かつては常に絶えぬ人通りで賑わっていたその場所も、こうして京を異変が襲ってからは訪れるものも数える程。
その場所に今、真っ赤な絨毯を広げて陣取る女が一人。
光に当たればキラキラと輝くだろう趣向の凝らされた衣装は過剰にも見えるリボンに飾り付けられ、いっそ邪魔なようにも見えるフリフリの袖から覗く、紫色の長手袋は器用にも先程から葉巻箱(シガーボックス)を二つ、両手に持ち一つの箱を挟んで巧みに操っている。
……十二天将が一、天焔玉である。
それを見るものはいない。 それでも、にこにこと笑顔を作って楽しげに愛想を振りまいている。
「それではここから一回転! 上手くいったら拍手をー! 」
……虚しく辺りに声が反響する。
か弱き無辜の人々は昼夜を問わず人を食らう妖に怯え、何時までも晴れることの無い赤いおどろおどろしい雲に精神を摩耗し、疲弊しきっていた。
天焔玉は己の芸道の力で勇気を与えようと邁進しているのだが、閑古鳥の鳴くこの状況を見るに、思い通りに事は運んでいないだろうというのは明白である。 )
(よーし……よろしくお願いします!)
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