ビギナーさん 2021-04-29 13:28:02 |
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>火黒
藍緋「………うん、」
(たまにはな、って。人間の姿をちょっとだけ許可して貰えた。私が人間の姿を保持するのには力を使ってしまう事だから「たまには、」って言うのがまた火黒らしい回答だ。根負けしてくれる火黒の優しさに心がじんわりと馴染む。もう夏の暑さが和らいでるお盆のひんやりした風が、顔に熱を持つ私に心地良い)
藍緋「フフ、あぁ、私にとってもありがたいとしか…、………うん、分かった。無理しないようにする、」
(強い妖と戦えるならって、火黒らしくてフフって可笑しそうに私も笑う。それから、「長生きしろ」って穏やかに溢されて、火黒の言葉に瞳が揺れ、彼の大きな手に握力を感じて私も、うん、と答えてきゅっと握り返す。私が瀕死で死にかけていたあの時、黒芒楼の姫に「頼む」と頭を下げていた火黒を思い出す。…あんな火黒を初めて見た、もう何も失いたくない、そんな悲痛な思いと、誰とも絆を作らなかった彼が私を大事にしてくれている、そんな事があの時は感じられた。彼が救ってくれたこの命を私はこの優しい彼の為にも大事にしなきゃと思えた。
頭上に広がる人間界の空は一番星が出始めた、夜の帳が幕を降ろし始めてる。逢魔時の時間からは私達、妖の時間だ。背の高い火黒の隣で、私は幸せそうな顔を浮かべて共に歩いて、何処へとともなく夕闇に紛れてく。…なぁ、火黒。孤独でないって、悪くないな。人間達の絆に憧れた妖の私と、誰かとの絆を恐れた元人間の妖の彼。そんな私達の未来は、まだこれから作られていく)
~結界師 黒芒楼編:完~
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