ビギナーさん 2021-04-29 13:28:02 |
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>志々雄
サーべ「……あはは、私はそんなに頑張ってないよ。…ただそうだね、あの子がそばに居てくれたからっていうのは本当。今だから言うけど、私結構重いうつ病だったらしいからさ、あの子がいてくれなかったらどれだけ療養が長引いたか分からなかったんだよね。今もこうしてあなたとまともにおしゃべりできてたかも分からないくらいでさ」
「…あの子さ、ほんと変わったよ。出会いたては迷子みたいだったのに、気がついたら私はその子に背負われるくらいになっててさ。”つらいってちゃんと言え”って言われるくらいで。なんだかずっと先に行っちゃったみたい。」
(自分の意図を察したか、それとも志々雄本人が思っているよりも控えめな所が作用したのか。相変わらず穏やかに笑むだけで自分は何かしたうちに出さないことにはくすりとしながらもハチの存在が大きいことに共感を示して。これも彼には絶対に言わないのだが、ハチを好きな理由が何となく分かった気がした。そして、同時に居場所のように思っているのかもしれないと。何かとそばにいてよくしてくれること、何かあれば合わせてくれること、よく笑ってくれること優しい言葉をかけてくれること…。それは魔法のように症状を日に日に良くして、悪夢までも取り払った。医者が酷く驚いていたことを今でも覚えている。自然と空を見上げては白い息を吐いて深呼吸しながら、無自覚に親のようなことを言って)
「…だけどさ。卵が先か、鶏が先か…みたいな話じゃないけど。そもそも伸ばそうと思っても掴む手がないとどうしようもないからさ。だから…ううん…」
「…私ね、今頃はもう死んでると思ってたし、なんなら既に死に体だと思ってた。何食わぬ顔で皆と混じってる、ただの手遅れ者。志々雄とあの子のことだったり、友達のことをどことなく俯瞰して見守るようでいたのは、きっとそういうところがあったから。あなた達のことを自然と”未来ある者”として線を引いてた。」
「だからイカとタコの未来もあなた達に託したし、振り切ってヒト…イカ柱になることを選んだ。だけど、私は今ここで息をしてる。人並みに笑って望みを伝えて、まだ不器用だけどありのままに感情を伝えられてる。」
(なんだか以前よりずっとちゃんと自分のことについて話せるようになった気がする。同時に時折頬を流れる冬風、カップ越しに手を温めるオニオンスープ。そしてその湯気。やっときちんと見られるようになった、仮初でない本物の夜空。それらを素直に、そして色を持って感じられているから、かつての自らへの諦観を語るその口ぶりは自然と明るくて。それからは念押しするかのように彼の顔を合わせていて口を開き)
「…………それってさ、あなたがもう一度望みを吹き込んでくれたからなんだよ。」
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