どこかの兄弟 2021-04-20 18:36:39 |
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>>120 / フール
(しばらく辺りを見渡すだけで何も出来ずにいると、身じろぎをした彼がゆったりと上体を起こした。まだ半分微睡の中にいるのか、眠気が取り切れていない彼の様子を見つつ、指で指し示された水とサンドウィッチは自分のためのものであったのかと理解すると、“いらねえなら押し込むぞ”と言って放つ彼に気圧されて「いえ、頂きます……!」。そう言って手を伸ばす。ちょうど食べやすい大きさのサンドウィッチであったが、教育の賜物と言えようか、彼のように口に放り込むようなことはなく、遠慮がちに小さく一口齧って。果実の程よい酸味とクリームの甘さがふわりと舌に広がると、軽く目を見開いた。「あの、美味しいです」。ありきたりな感想となってしまったが、それは紛れもなく本音。変に飾り立てた言葉よりも素直に伝えた方が気持ちが伝わりやすいだろうと、戸惑いなく感想を述べて。オリヴィアがフールに微笑みかけたのはこれが初めてだろうか。しかし、はたと気付いたようにその笑みも消え、すぐに申し訳なさそうな表情で)
……あの、ご迷惑をお掛けしたようで申し訳ありません。私を運ぶのは重かったでしょう。それにこんなことまで……。
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