>36 「何回か逃げたことがあるからここのことはちょっとだけ知ってる…でも、街のことは全然分からないよ?」少年は少し照れ臭そうに頭を掻きながら言い、看守控室の扉に耳を当てて足音を聞く。「…誰も、いないね。今のうちに出ちゃおうか。」モニターの前に置いていた壊れたラジオを両手で大事そうに抱え、金属の扉を耳障りな軋む音を立てながらゆっくりと開くと周囲を見回した。