語り部 2021-02-01 00:27:15 |
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>レヴィ
(頭に伸びてきた手に目を見開いて怯えたように首を竦め…優しく触れたそれにほっとしたように目を溶かした後、名残惜しい別れを悲しむ恋人のように傷口にキスをして指を離す。唇の端から垂れた銀糸を拭えば酷く疲れたように惚けた顔をして──思う。これから先の長い一生で今日のことをきっと何度も後悔するのだろう。
まとまらない思考の中でも確かにこのキョウダイから離れたくて、立ち上がろうとして足に力が入らなくて尻餅をつくように座り込む。震える体は寒いからなのかもしれないし、怖いからなのかもしれないし…本当は無理矢理こじ開けたパンドラの匣の向こうで吸血鬼の本能が屋敷中の子羊を今狩りに行けば心底楽しいぞと囁くから──その蓋を押さえつける理性が子羊を逃がす為の方法を必死に告げる。ボクだけが彼らを外に逃がせるのだろうと。同時に思う、信用されるボクなら簡単に狩れるだろうと。
顔を上げて涙で滲んでぐしゃぐしゃの視界の中の遠くの方でボクら以外の影が揺れる。人間だ、逃げてきたんだ、こっちに来たら危ないからあっちに行った方がいい…いいな、食べたいな、そうか彼らが冷たくなった後なら何も感じなくて良いのか…)
…ボクは空腹でいい、食べたくない、いらない──キョウダイたちの残りでいい。さっきみたいに飛んだ血でいい、シーツに染みた余りでいい…ボクは、あ、れ?
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