語り部さん 2020-12-17 23:27:56 |
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>>67 Ⅸ様
答えの出ない問い。出口のない迷路。どんどん塞ぎ込んでいく自分の中で、"蘭"が目を醒ます。
(そう。アタシなら上手くやれた)
「……!」
(どんなポジションも。どんなテクニックも。パパとママは喜んでくれた。アンタには出来て?)
「やめて……!」
同時にてんで駄目だった自分の姿と背中に突き刺さる両親の声を想起し、思わず頭を抱えて悲鳴を上げそうになる。
そんな時だった。視覚と聴覚の双方に訴えかける何者か――先程の男の子だろうか。自分を落ち着かせるべく一息ついて見やると、そこには幼い顔立ちにくりくりとした大きな目が可愛らしい少年が座っていた。
先程の子よりは年上だろうが、それでもまだ中学に上がるか上がらないかという幼い外見。にもかかわらず、彼は丁寧な言葉遣いで自分を労わってくれた。どうやら一部始終を見ていたらしく、誘いを断ってからの不自然な流れを見て心配してくれていたのだ。
「ありがとう。私は大丈夫――ほんの少し、気分が優れなかっただけなの」
無理やりにだが、不自然さは出ないよう柔らかな笑みを繕って、少年の心遣いに感謝する。
彼の介入のおかげだろうか。いつの間にか、精神を苛む記憶も、姉の影も消え失せていた。
「優しいのね」
ベンチから立ち上がり少年の目の前まで歩み寄ると、そっと手を伸ばして頭を撫でた。
まだ幼いのに。周りのことなど考えず、無邪気な戯れに興じていてもいい年頃なのに。赤の他人である自分を労わってくれる優しさと思慮深さは、一朝一夕で身に付くものではない。
――ところで、警戒のけの字もなく頭を撫でている少年こそ、敵組織の防衛課所属にして自分と同じ加護者である"Ⅸ"その人なのだが……彼は敵の前に出る際、ペストマスクで素顔を覆い隠している。故にプライベートにて素性を見抜くのは至難の業であり、神楽の現在の精神状態では尚更無理があるのだった。
(/絡んでくださりありがとうございます!こちらも友好的に行きます!)
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