加賀 2020-12-13 03:01:30 |
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こちらこそおおきに。( 貴方の手を取り、手のひらに優しく口付け返すと離し )せや、屋敷で三木くんに、縁とどうぞてお菓子の詰め合わせ貰てん。…貰たん俺だけやから、みんなには内緒やで。( 焼き菓子の箱を抱え、ご機嫌そうに笑いつつ、しぃ、と立てた人差し指を唇に当て )いつも導入ありがとうな、返しやすくて助かる。長くなってもたから適当に端折ってや。こっちも返してもうたけど、蹴ってくれてかまへんよ。ほなね。
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( あと10分で終業だ、明日は休みで納期の迫った仕事も無い。英語の羅列が踊る手元の資料を時折確認しながらキーボードを叩きつつ、デスクの上のスマートフォンを一瞥した。いつもであれば、チカチカと結構な頻度で点滅し、恋人からのメッセージを受け取ったことを知らせるというのに、今朝からうんともすんとも言わない。今日の仕事は昼までと言っていたから、昼休憩中に連絡をしたのだがその返信も無い。昨夜までは此方が返信をしなくてもぽんぽんとメッセージを送ってきていたし、ほんの短い時間ではあったが眠る前に通話までした。マメな男だ、忙しくとも連絡の一本は入れてくるとわかっているから嫌な予感が過る。脳内を巡るそれが杞憂に終わることを祈りつつ、ミルクと砂糖たっぷりのコーヒーを飲み干し、パソコンの電源を終業時刻ぴったりに落とした )───開いとる、( 会社を出て真っ直ぐ向かうのは貴方の家。道中電話も掛けたが応答は無い。何か危険な事に巻き込まれていないようにと祈るような気持ちで足を早める。ようやく到着し逸る気持ちで合鍵を使用するも空回りし、扉が何も阻む事なく開くものだから背中には冷や汗が伝い、目を見張って )……?!…縁…おい、ッ、あっつ!……縁!えにし、…わかるか?( 流石に何かおかしい。廊下を勢いよく突き進み、飛び込んできた光景に頭が真っ白になる。まさか今朝からこうだったのではと呑気に仕事をしていた己を呪い悔しげに歯噛みしつつ、鞄を辺りに放ると白いソファに沈み込む貴方に焦った様子で駆け寄り。床に座り込み、浅く上下する肩と唇から漏れる荒い呼気を確認し少しばかり安堵しながらも、汗みずくで張り付く前髪を避け額に触れると、その熱さと真っ赤で苦しげな顔に眉を下げ辛そうに唇を噛み締めて。取り乱しそうになる己を叱咤し、こんな時こそ落ち着かなければと深呼吸を一度してから、不安な気持ちを押し込める。恐らく風邪からくる発熱だろうが、あまりに朦朧としているのなら救急車を呼びたい。まずは意識の確認、膝立ちになり、少しだけ声を張ると貴方の名を呼びながらとんとんと優しく両肩を叩いて )
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