加賀 2020-12-13 03:01:30 |
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(たった五日間、連絡を取る事が出来ずに顔を見る事も出来ない日々はずっと長くつまらない。必要以上に仕事を詰めて少しでも意識を紛らわそうとしたところで意味はなく、鉄を噛むような苦い時間だけが過ぎる。静かな家に帰るのが嫌で、意味も無く無駄に事務所に泊まり込んだり食べ物を胃に落とさずに酒だけ食らう不摂生を繰り返している方が素面の頭で貴方を描き不安を抱くより耐えられた。ほんの五日間振りの貴方の家に続く道を進むにつれて不安や恐れが強まるのに、そんな時でさえ久しぶりに会える貴方に嬉しくなってしまう始末で。そうして到着した扉の前、躊躇いの後に合鍵を使う事はせずインターホンを鳴らす。数秒待っても反応が見られなくて嫌な想像がぐずぐずと生まれ、乾いて引っ付く喉が開くように唾を飲み込んで。もう一度だけピンポンと音を鳴らし)───誠士郎、入るよ。(二度目のインターフォンも音を鳴らすだけで、人の気配がする扉が開くことは無い。意を決して合鍵を取り出せばカチャリと軽い音が随分と重たく思えて、追い掛けてくるような嫌な考えを振り切るべく小さい咳ばらいを)……、誠士郎?!(恐る恐ると踏み入れた貴方の家は、今までに見た事が無い荒れた様で驚いた。そんな戸惑いは数日前とはてんで違う貴方の姿に消える。落ちる袋は中身が有るかもわからない為、踏まないように気を付けつつ貴方のすぐ傍へ駆けつけて。)あぁ、くそ。どぉしよ。病院か、救急車か。……誠士郎、せぇしろ(血の気が引くほど怖くなる。いつからこうだったのか、どうして自分はそれに気付けなかったのか。浮かぶのは自己嫌悪のそれでやり場のない思いがつい口から出てしまう。背を摩り、俯せでは苦しいだろう肺を緩める為に背を下に横にさせて)遅ぅなってすまん、ごめんなぁ、(頬を撫でるように片手を添えつつ、もう片方の手は心拍数を探る様に貴方の左胸へ添えて。パニックに陥りそうな意識を少しでも冷静に運ぶようにギリリと歯を食いしばり)
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