加賀 2020-12-13 03:01:30 |
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( アパートの階段を駆け下りて、すっかり夜が更けた閑静な住宅街を早足で進む。背後から足音が近付いてきて、貴方だと気付いた時にはもう遅い、逃げ出そうと慌てる間に呆気なく捕まってしまった。上半身を捻り振り向くと、初めて目の当たりにする貴方の不快さを露わにした表情に固まり、その剣幕に気圧されてひゅっと息を呑んで。掴まれた手首が痛み、僅かに顔を顰めながら思わず振り払おうとするも、貴方の方がよっぽど痛くて苦しそうな顔をしていて、だらりと腕の力を抜いて降伏し )…~~~ッ、おまえは、なんで…帰れ、言うたやろ。───こんなに冷たくして、アホ。( 正面から対峙し、遠ざけようとして投げつけた拒絶のそれは、震えて全く説得力がない、こんなに好きになってしまったのに、突き放すなんてできるわけがなかった。全身で、全力で己を好いてくれているのがわかる貴方の言葉に、態度に、隠れていた臆病な心が顔を出す。いつもの嗜めるような声と共に、力を込めすぎてすっかり白くなり、氷のように冷たくなってしまった貴方の大事な商売道具にそっと触れると、巻きついた指を一本一本丁寧に外してゆき。自分の熱を分け与えるように、両手でやんわりと摩りながら包み込んで )………話す。けど、時間くれへんか。───5日後の夜に俺の家。それまでは会わへん。( いつも真っ直ぐに此方を見てくれる貴方に報いるように、同じように視線を合わせると静かに、はっきりと告げ。ひどく情けない話だが、今夜全てを明かしてしまうのは恐ろしくて、心に整理をつけておきたかった。指定した日の翌日はお互いに休日、半ば一方的に、有無を言わさぬような力強さでもって要求を押し付け )
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