加賀 2020-12-13 03:01:30 |
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……いや口で言うな、( どこどこと煩い心臓を押さえ付けて大きく深呼吸すると、顔を覆い隠していた手を退けて、ゆっくりと瞼を持ち上げ。不意打ちだったとはいえ、情けない姿を晒した僅かな悔しさを覗いた瞳に滲ませながら、口を真一文字に引き結び幾分か赤みの引いた顔を背けては、スッと右手を伸ばし、八つ当たりでもするように貴方の鼻をぎゅむりと摘んで )パス制なんかい、……あー、でも、いつでもやなくてたまにでええかなあ。( 乱れてしまった髪を手櫛で梳かし直してから、仕上げとばかりにひと撫ですると手を離し、ふっと揶揄い混じりに笑い )なんやそれ、心臓軟弱すぎるで……ッ、こら、( 首筋をなんともこそばゆい感覚が襲って首を竦めると、嗜める声と共に悪さをする貴方の手首をさっと捕まえ、痛まない程度に力を込めながら己の胸の辺りまでぐっと引き寄せ。どこか色気を滲ませた笑みを見せてから、すりと人差し指と中指で手の甲を悪戯に擽り。ごく自然な流れで瞼を落としつつ貴方の手のひらに顔を近付け、そのまま少々かさついた唇を押し当てて )─へえ、専門のカフェなんてあるんか…!( 身を寄せると、見せられたスマートフォンの画面を覗き込みながら、心なしか声を弾ませ、問いかけには首を横に振って答えて )サ店ならたまに行くけど、こういう洒落たとこは行った事ないわ。………すごいなあ、ホンマにチョコばっかあるやん。( すっかりメニューに目を奪われ、感心した様に呟き )ああ、それなんやけど。( 思い出したように、近くに置いていた鞄の内ポケットを探り )……実は、もう一枚満了してん。( 鞄から取り出した真っ白なカードは、厚紙を切って作られたもののようで、10個に区切られた手書きのマス目、いずれにも貴方が購入した花丸のスタンプが押印され、右下の余白に"よくできました"と赤いインクの几帳面な文字が並び。おずおずと不安げに差し出し、貴方の表情を伺って )屋敷で会うたときにカード貸したってって言うタイミング失ってもうてなあ。せやから、…勝手に作ってん。お前の持っとる買ったカードみたいに綺麗やないけど、……貰ってくれるか?
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