迷子の魔人 2020-11-10 17:35:38 |
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(どうなることかと見ていれば、こちらに視線を差し向けてきた国王の言葉に思わず耳を疑い。口を噤んだままながら、刹那だけ瞳に驚きの色を映してしまったのは周囲に気付かれただろうか。続けて、内心さすがに怒りを覚え。……なんだ、つまり、この王様は何処まで放任する気なんだ?ガーニム兵士長との会話で自分の責任に言及したのは一体何だったんだ、と疑問が渦巻き。時間が惜しいか、と平然と言い切られたことも、それはむしろ、こちらが王家に聞きたいことだろう。契約者たちの知識に差があることを分かっていて、組織の側で正式に書簡を介し、研修不足の穴を埋めようとするのではなく、あくまで素人集団の自助努力のような形となるであろう勉強会の方を推すとは。それもそちらの提案は理由を聞かれることもなく無条件、怠惰を疑わないのが無理というもので。
自助努力に任せきるばかりではなく、少しは組織にも責任感を見せてほしいと思った気持ちは全く伝わっていないらしく、腸が煮えくり返る思いであり、不信感はピークに達したが、ここでそれを全開にするのはまずい。表面的には惚けたような無表情で、一瞬だけ動きを止めた程度のリアクションに止め、胸の内では浮かんできた様々な感情を圧し殺し、国王に向けてニッコリ微笑むと「……重要な事柄に関し、正式に文書の残る形で情報の公開と共有を希望するのは、おかしなことですか?」と問いかけ。
実のところ、先の国王の返答では、そもそも質問したシャフィークもやや目を丸くしていたし、最初に自身に"後で質問させてほしい"と言っていたガーニムも冷気を当てられたように表情を強張らせていたのだが、自身が切り返せば、次はそこに挑発的で素直ではないニュアンスでも嗅ぎ取ったのか、両者ともこちらにさりげなく視線をやり、シャフィークは難しげな顔立ち、ガーニムは何か言いたいのを直前で堪えているような表情となって。対して、先の国王の発言に薄く笑みを浮かべ、頷いていた国王側近については、もう瞳の色と固く引き結んだ唇から怒りを隠しきれておらず。…人当たりの良さそうな笑顔で国王を見つめたまま、内心、まずったかな、他の言い方があっただろうか、それとも苛立ちがばれてしまったのか、とも思うが、既に言ってしまったことは取り消しようもなく、割り切って、国王の返事を待つことにして)
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