管理者A 2020-10-03 18:10:46 |
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◇ 旭 孝仁( あさひ たかひと )
( 目には見えない確かな風に煽られ、ライターの炎がゆらゆらと揺蕩う。やっとの思いで火を点けた煙草の先端から、緩やかに立ち昇る一筋の紫煙はまるで、下層を低く漂う積雲に溶けるかのように燻り、そして消えていった。暦の上では既に春を迎えたというのに、未だ続く厳しい寒さが身に沁みる、二月の半ば。ものの数分、ベランダに出ているだけで痛みを感じる程に悴む指先。燃焼を促そうと強く吸い込み過ぎた所為か、口腔内に広がる苦味走った独特の風味に思わず表情を歪め。 )── っ、不味。
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