極彩の魔女 2020-09-18 15:38:35 |
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>>リヒャルト様(>>549)
(逸らされていた視線が合い、彼の一言一句に耳を傾けて、一人何か払うような仕草を見届けたその後。同じ顔の高さで向けられた言葉が、それまで作っていた表情に罅を入れる。「……僕の目が?」暖かそうと言われたそれを、ぐっと大きく丸く見開いて、細く揺れる声で問いを返す。「そう、言われたのは、初めてです。いつも、怖い、冷たいと言われるもので……」彼にしてみればきっとなんて事はない、恐らくは只の詫びへの返事であろうその一言。それでも、捏造と知らぬ己の記憶には存在しない瞳への評に、じわりじわりとむず痒い感情が込み上げる。「…――ふ、あははっ!何だか擽ったいですねぇ。」やがて音の途切れた唇から飛び出したのは、嬉々とした笑い声。眉を思い切り下げ、目が糸になるまで細めて、口の端を歯列が見える程に吊り上げる。その顔が拵えたものでも装ったものでもない事を証明する、仄かに色付いた頬を、胸にあった手の甲で押さえたのを切っ掛けに一つ息を吐き出し、「…さて。僕は貴方と話をするのは今が初めてですから、この場で何かを評するのはどうにも難しいですが…少なくとも、僕は今、貴方の言葉が嬉しかったですよ。」名残に未だ弛い頬のまま、冗談めかした軽い謙遜を軸に固い話のレールを切り替える。「…おっと。そういえば、名を名乗るのをすっかり忘れていましたね。…僕はハーシェル。呼び捨てでもハーシーでも、貴方のお好きなようにお呼び下さい。」それから、今更に自分の名を告げたのは、不意打ちを貰う直前に見た彼の滞る唇への配慮と、今立ちはだかる壁に歩み寄らんとしての事。「それと、答え損ねておりましたが……馬、好きですよ。地を駆ける力強い姿も、偽りの無い瞳や愛嬌のある仕草も。」続けて、彼を見詰める胸中の大蛇を気取られぬよう、柔い声で、言葉で、詫びる前に尋ねられたそれについて語りながら、僅かに首を傾いだ視界の中に、彼の姿を掬い上げる。「…リヒャルト皇子も、馬がお好きなのですね?」指先で壁を撫でて綻びを探すように、此方からも期待で塗り上げた視線を添え、彼へ問いを渡して。)
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