極彩の魔女 2020-09-18 15:38:35 |
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>>リリィ姫(>>553)
――――、うん。俺は兄上方も弟たちも等しく大切だけれど、双子の絆……って言うのかな。まさにあの子達こそ、絡み合って簡単には解けない特別な蔦みたいだ。
(肯定の返事を落とすまでの沈黙はお姫様と双子への配慮。彼女が抱く美しい幻想を壊すのは忍びなく、そして双子本人でもない自分が彼等の歪な関係を暴露するのは余りにも無粋。双子の蔦はきっと永遠に解けることはない――しかしそこに魔女の送り込んだお姫様という存在が影響を与えれば、或いは。ありえるかどうかも分からない未来に興味を惹かれているのも事実で、下世話な好奇心を誤魔化すように控えめに咳払いをして「 そう、姫の怪我がひとつでも減って本当に良かった 」柔らかく微笑んで告げた言葉は本心。こんなにも可憐で甘い香りのする彼女の血液を一滴も無為にしたくないと思考しながら、治療の仕上げとばかりに包帯の上から手の甲へ触れるだけのキスをして「 早く治るおまじない。 」と隻眼を糸のように細めて微笑んで。甘い香り、そうそれは比喩ではなく確かに存在するものだと鼻腔を擽る花の芳香が主張して。つよく薫るそれが百合のものだと知覚できるのはもう少し後の話で、嗅覚に集中していた神経は不意に握られた手へと根こそぎ攫われて「 君は深窓の佳人だね。なら、こうして出会えたことも奇跡だ。一度出会えた奇跡をみすみす帰せるほど無欲じゃない――俺だって君が思うよりずっと強欲だよ、姫。 」触れ合った手からじわじわと身体が熱を帯びていくのとは裏腹に、閉じ込めておけない違和感が胸中をさらさらと冷静にさせてゆく。今日創り出されたばかりのお姫様に王宮以外の居場所があろうはずもないのに、まさか緻密なダミーの記憶まで設定されているとは……流石は極彩のマドモアゼルだとゆるゆるかぶりを振って「 君が望むなら、檻には戻らなくていい。心配しないで、第三皇子が全部上手に片付けるから。 」普段は力ある皇族の立場をひけらかすなんてはしたない真似はしないが、今回ばかりはその力で少しでも彼女のダミーの不安を取り除くことが出来ればと期待して。こちらからもそうっと手を握り返しながらゆっくりと立ち上がり「 ドレスを着替えようか、姫。 」わずかに凪いだ風が、潰れた片目を白日に晒さない程度に重たい前髪を揺らす。王宮の所有物たるドレスを彼女に与えると提案することで、王宮に留まることを是としながら微笑みのままに返答を待って)
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