愛しきプシュケの式日に、ルサンチマンは嘯いた＿＿指名式、BNL

>127__ジーク様


あなたとの時間に、期限を決める事などできませんもの。
（例えこの時間が長く続くものではなくとも、先んじてお別れの時間を定めたくはなかったが故の" いつまでも "という戯言。然しそれは聞き手により傲慢な印象を与え兼ねないものでもあった。というのに、耳を擽るのは喜色が滲んだ笑声で。朗らかな彼の人柄に密かに胸を撫で下ろして。「 …ですが、 」気落ちした己の声により気を遣わせてしまっただろうか。機械を通して語られる優しい言葉、それを信じられないわけではないけれど、と不安げに瞳を揺らし───ふと、先日の出逢いを甘美な表現に喩え、嘘偽りなく真っ直ぐに届けられた想いにはふわりと破顔した。「 ええ。こうしてご縁を繋ぐことができたのも、全ては運の巡り合わせ 」彼の言葉は蜜の様に甘く、些細な不安や悩みを全て溶かそうとする。嬉しさと気恥ずかしさの両方を織り交ぜつつ肯定を返し、受話器を握る手にきゅっと僅か力を込め。あの日、あの時間、そもそも己が散歩に出掛けていなければ、彼に見つけて貰える事はなかったのだろう。運命とも言える出逢いを改めて自覚し、その幸運を確と噛み締めながら電話口にて控えめな笑い声を漏らして。此方の罪悪感を帳消しにしてしまう魅力的な文言に胸一杯感謝の念を抱き「 …本当に優しいお方 」と安心しきった柔和な声音で囁きを零した。今後 彼との縁がどれ程続くかは分からないけれど、切れない限りいつかは己が彼の助けとなれる日が来るだろうか）