愛しきプシュケの式日に、ルサンチマンは嘯いた＿＿指名式、BNL

>119__ジーク様


（返答を受け次第、就寝の挨拶を告げて受話器を置こう。そう思案して視線を下げる最中、彼から発せられたのは此方を引き止める言葉。真摯に紡がれゆくそれらを聞き入れつつ" まあ… "なんて小さな声を上げ、あまりに真っ直ぐな声音から、先約に関する否定も嘘ではないのだろうかと緩く瞬きを繰り返して「 ───ふふ、私で宜しければいつまでも 」事実がどうであれ、彼の願いを断る理由など一つもない。耳に心地良い穏やかな声で幸せだと、大事だと、そんな風に語られては気も緩んでしまうもの。胸元に添えていた手を柔く握り、ほんのりと込み上げては胸中を満たしていく不思議な感覚にほう、と息を吐いた。「 おかげさまで、すっかり良くなりました 」このまま通話が続くのであればと近くの壁にそっと背を寄り掛からせ、先日の怪我について気遣う問いには視線を右足へ落とし「 先日は本当にお世話になりました。お忙しい中 色々と気を回していただいて、…何とお礼を申し上げれば良いか 」未だ拭えない罪悪感にも似た気持ちを声に乗せ、軽く握っていた手を頬に当てて眉尻を垂らす。例の件でほんの僅かに親しくなれた気はしても、皇族と一国民という関係が崩れる事はない。故に、彼の厚意に甘え過ぎていた事を一人反省し）