? 2020-08-29 20:59:24 |
通報 |
少し面白い話をしましょうか?
( ポン。静まり返って、寂しい気がする雰囲気を変える手を叩く音。ニコリ とまるで、暗殺者とは思えない笑みを浮かべ私に近寄ってくる。数mしか離れていない距離、いつ殺されるか分からない。不安、絶望、恐怖。全てが混じった心情。そんな私の気持ちを考えもせず、彼女は再び美しい口を開いた。「 私が初めて殺ったのは、丁度御嬢さんくらいの年。 」 彼女は語る。下を向き、先程とは別人のように弱々しく、まるで 『 壊れ物 』 のように。私は見つめるしかできなかった、彼女の汚れてしまった瞳を。改めて微笑みを浮かべる、寂しげな彼女の口元を。 「 …結局、私に人の心なんて無かった。それだけよ。 」 彼女の話し、全部を聞き終える。溜めに溜まった哀しさ、全部吐き出せた訳じゃないだろう。でも少しだけ、彼女の瞳は真っ直ぐだ。人の気持ちを考えれない。だからなんだ?彼女は彼女だ。私は、そう思う。喋りきった彼女のお口、クス と小さく微笑んで見える。泣きそうな目をしているのに、微笑んで見せようとしている。私は決めた、彼女を泣かせない。私は決めた。彼女の美しい口から、二度そんな恐ろしい話をさせない、と。恋をしたのだ、汚らわしくて純粋な瞳に。見惚れてたんだ、嘘偽りない殺意に。 「 話を聞いてくれて有り難う。御嬢さん…、少しは分かって…… 」 不意に触れる彼女の頭と、私の手。冷たいかも知れない、彼女をそれを見て ピクリ と固まる。『 ねぇ、お姉さん。無理しないで、泣いて良いんだよ? 』 私が言える精一杯。届きますように、届いてくれますように。彼女の瞳が二度と汚されませんように…。 )
トピック検索 |